不調の原因は環境のせい……『マネジメントはがんばらないほどうまくいく』

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 マネジメントの中でも、とりわけ個人差が出やすい分野が、モチベーションアップ、チームワーク、チームビルディングなのではないでしょうか。たくさんの意見や書籍やセミナーから学ぶことは理解につながりますが、いざ、実践の部分ではかなり個人差が出てしまうものです。まして、部下のメンタル面まで気を配るのは大変でしょう。
 部門の長だけではなく、チームのリーダーになったとき、部下ができたときに、なにをすればいいのでしょうか。本書は、セルフケア、ラインケアを中心に現代のマネジメントをわかりやすく示してくれています。

産業医が、一番シンプルな方法を明かす

『マネジメントはがんばらないほどうまくいく うつうつ部下をいきいき部下に変える世界一シンプルな方法』 (三宅琢著)は、年間1500人以上と面談してきた産業医が、迷い悩むリーダーのために書き下ろした本。すべきこと、すべきではないことをキッパリと分けて、「ここだけは」という部分を教えてくれます。その結論はいたってシンプル。「なんだ、こんなこと?」と拍子抜けするほどですが、そこには、深い深い意味があってのこと。
 本書では、論理立ててなぜシンプルな方法が上手くいくのかを解き明かしています。中でも特徴的なのは、会話形式の部分でしょう。
 たとえばラインケアで上司がすべきことはなにか。「マネジメントは、行動のみを見ればいい。ラインケアも一緒です」(P94)とキッパリ。
 部下の気持ちがわからない、今日の部下の調子はどうなのか──。心配になるのは仕方がありませんが、心の中まで読み取れるはずもなく、まして医師でもない人が、生半可な知識でメンタル面の対応をすれば大変なことになるかもしれないのです。だからこそ、シンプルに考え、見るべきところを見ればいい。それが「行動のみを見ろ」という提言でしょう。業務に支障が出る、会社の規律に反するような行動(遅刻、欠勤、早退、連絡の滞りなど)の部分を見過ごすな、ということだと思います。

ストレスはカレーと同じ!

 このほか、本書にはさまざまなおもしろい話が登場して飽きさせないのですが、たとえば、P32「ストレスはカレーと同じ」。
「みなさんが、カレーと聞いて思い浮かべる味も、それぞれ微妙に違っているはずです」(P32)。
 まさに、そうですよね。家庭的な味と言っても、甘めから辛め、中の具材まで、家庭によってかなり違います。いま世の中ではカレーの店がとても増えていて、インド、ネパール、スマトラ、タイ、和風などなどさまざまですし、南インドとかさらに詳しく分類されていくと、もはやわからなくなるほど多いわけですが、「カレーにしよう!」と言ったときにどのカレーを浮かべるかは人それぞれです。
 それがいわば「期待」ですね。ところが、出てきたカレーは、自分の期待したものと違っていたら?
 その違いの大きさによって、ストレス度合いが変わるわけです。「意外においしい」「まあ、食べられる」「こんなのカレーじゃない」「まずい」「ふざけるな」などなど、反応の度合いもさまざまでしょう。
 職場で起きるストレスも、ほぼこれと同じなわけですね。期待していたものと違うものが毎日出てきたら、ストレスですよね。
 といった、わかりやすい話がいくつも登場してきます。ちょっと人に話したくなりますね。

不調の9割は環境のせい

 私がとくに注目したのは、「現代の不調の9割は『環境』のせい」(P75)という見出しでした。
「え? 環境? どうすることもできないじゃん」と思ったり、「心の問題なのに、自分の外に原因を押しつけていいのかな」と思ったりもしたのですが、読んで納得でした。
「自分に適した環境と、実際の環境とのミスマッチからストレスが生まれ、不調が起きる」(P76)
 ということで、著者は「生活環境病」と呼んでいるのです。
 たしかに、さきほどのカレーの話ではありませんが、環境は簡単に変えられないし、期待したものとズレていることのほうが多いわけですから、そこからいろいろとストレスが高まっていくのだと気付かされます。
 その対処については本書をお読みいただきたいのですが、簡単に私なりにまとめると「環境を変える」ことが第一。この環境は、職場を変えるほど大げさなものでなくてもよくて、身の回りのレイアウトや小物の配置などを変えていくなど、人によってさまざまな対応ができそうです。私の場合は、とりあえず超小型の加湿器をPCの横に置きました。これだけでかなり気分はいいですね。
「環境は変えられないよー」とか「そんな小手先じゃムリ」と言う声も聞こえますが、そのときは本書には「行動を変える」を解決策としています。これは、「他人は変えられない、自分は変われる」とかとも似た話かもしれません。
 著者はたとえば「挨拶」を例にあげています。どよーんと暗い雰囲気の職場を変えるには、室内の灯りを明るくするといったことも大事ですが、同時に「明るく挨拶」を交わすだけでもかなり変わるのではないか。それは確かにそうですね。ついついムードメーカー的な明るい人だけに頼りがちですが、そうではなく挨拶だけはみんなちゃんとする。「おはよう」と言う。そこから環境を変えていくことができるかもしれません。こうしたふだんはなにげなく発している言葉が、環境を変えていくきっかけになるのでしょう。

 モチベーション、やる気、チームワーク、そしてメンタルが気になっているなら、本書の魅力的な目次を見て、気になるページから読み始めてみてもいいでしょう。こうしたスタンスでいくつもの企業で環境を改善してきた著者ならではの貴重な手法と考え方を、さっそく実践に移してみてはいかがでしょうか。

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ますもと・てつろう

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「かきっと!」の編集長です。記事もいろいろ書いています。

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