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『物流業界立て直しバイブル』(岡卓也著)

 

 本書は、物流コンサルの視点から中小物流企業を主な対象として執筆されています。ポジションにあった戦略とはなにか。根本的な考え方、改善事例も紹介しています。
 日本ならではの独特の物流構造ゆえに起きている危機を、物流・ロジスティクス領域を中心としたコンサルタントが現状を冷静に分析し、明らかにしています。物流業界は今後、どのように改善を進めていけばいいのか。その処方を考察するだけではなく、一般の消費者、荷物を出す側、荷物を受け取る側の意識改革にも踏み込んでいます。いまやライフラインとして物流の重要さは増すばかりですが、そこに起きている危機とは? どうすればその危機を克服できるでしょうか?

目次

第1章 物流業界、物流サービスの変遷
第2章 物流業界「健康診断」のすすめ
第3章 〈実践〉物流企業が取り組むべきこと
第4章 荷主視点、顧客視点から考える物流の安定供給
第5章 すべては物流の安定供給のために

迫る物流の危機

 どうしてトラック1台あたりの積載率が低下しているのか? どうして人材不足で長時間の労働にもかかわらずドライバーの賃金は上昇しないのか?
 統計など実態を表す数字から突きつけられる日本の物流の問題を明らかにしていきます。さらに、事業者、荷主、ユーザーの考え方を変えていくことで、解決できることも多数あると提案しています。
 実は2020年4月、国土交通省は、トラック運送業に係る標準的な運賃を告示しています。
 なぜこれが必要だったのか。それは「トラック運送業においては、運転者の労働環境は他の産業と比べて長時間労働・低賃金の状況にあり、運転者不足が大きな課題となっています」(国土交通省)とあるのです。
 この実態は社会であまり広く知られていないばかりか、物流が危機に瀕しているというのに「運賃は安い方がいいに決まっている」といった考えが広く定着していることは驚きです。

現代の教養書としても

 運賃の安さが問題になる一方、消費者としては「送料無料」に目がいくのです。「送料はない方がいい」という発想。それは「運賃は安い方がいい」と同じではないでしょうか。
 物流が止まれば、日本の経済、社会、そして日常が止まります。それを支えている人たちにスポットライトが当たることは少なく、クレームなどの問題点がニュースになったときだけ負のイメージが流れていくのが現状です。さらに、受け取る側のわがまま、気まぐれなどが引き起こしている余計な作業の増大も問題でしょう。
 結果的に、労働環境の問題、労働がきちんと収入に反映されていない実態、荷主や荷物の受け取り先の勝手に振り回される現状、さらにこうした大変さから人材が不足しがちな点などがあぶり出されます。
 この点で、物流専門家だけが読めばいいというものではなく、私のように日々、宅配便やお取り寄せなどを利用している一般のユーザーも一読しておきたい本となっています。いわば、現代の教養書です。

置き配は定着するか?

 コロナウイルスによって不要不急の外出を避けることが求められ、宅配便のありがたさを感じた人も多いはずです。外出しないなら、不在であることは減りますが、受け取るときに人と人が接触することを避けたい気持ちもあり、宅配便も最後の部分(エンドユーザーが受け取るところ)での工夫が必要と感じた人も多いはずです。
 すでに、置き配を選択できるECサイトも出てきましたし、宅配ボックスを上手に活用する人も増えてきていることでしょう。
 置き配についての保険も登場してきたので、今後、日本でも定着していくことが考えられ、それによって配送のムダ(不在による再配達)が減るだけでも改善につながりそうです。

キーワード「タッチレス物流」

 著者は、この本で具体的に中小の物流事業者が取り組むべき、いま必要な改善について詳しく触れています。第2章で、現在の抱える問題点を明確にするための方法をわかりやすく解説。理想的すぎる大手の実現していることをマネするのではなく、身の丈にあった自分たちがいますぐ改善しなければならないことを明確にしていくことを推奨しています。そして第3章では具体的な改善手法に触れています。サービス競争の結果、見過ごされてきた部分であったり、物流事業の根本に関わる部分であったりしますが、どれも具体的に改善策を提示しています。また、「タッチレス物流」を提唱してもいます(P151)。荷主から最終的な配送先までの間で、できるだけ荷物に触れないことを目指すのです。触れる回数が増えることは、無駄が増えることでもあり、トラブルを増やすことにもつながるからです。
 これからの時代、タッチレス物流はおそらく業界の潮流となっていくのでしょう。

配送料は誰が負担する?

 一定額以上の買い物をすれば配送料無料、というECサイトがあります。なにを注文しても送料無料のECサイトもあります。また会員であれば配送料無料としている例もあります。ただ、この「無料」は実際には誰が負担しているのか、という点が疑問です。
 もしそのことによって、物流に携わる人たちの収入が奪われているとすれば、問題ですよね。
 さらに物流を支えるために社会で多くの負担をしているとしたら、私たちは目先の「送料無料」に惑わされて、他の支出で知らない間にそれに相当するコストを負担している可能性もあります。
 ウーバーイーツのような新しいタイプのサービス業(物流業とも言えます)は、送料を明示していることが多く、利用者が負担したり、店が負担したり、少なくともどこが負担するか比較的わかりやすくなっています。
 利用者が配送料を負担するのは当然、という考えが日本でも定着すれば、物流をめぐる危機を改善させる一歩になりそうです。

 

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ますもと・てつろう

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投稿者プロフィール

「かきっと!」の編集長です。記事もいろいろ書いています。

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