
『SALES GROWTH ─世界のセールス・エグゼクティブが伝える5つの実績のある戦略─』
トーマス・バウムガルトナー/オマユーン・アタミ/マリア・ヴァルディヴィエソほか著
本書の構成など
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NetGalley(ネットギャリー)で、発刊前のゲラ状態で読ませていただいた。
本書は第2版の翻訳である。
初版は2012年。そこに新たな記事を追加している。本書のもっともおもしろいのも、追加された部分だろう。
「はじめに」によると、第2版ではあらたに、プレセールスの重要性、マーケティング部門と協働するメリット、今後数年間の営業に関わる変化予測について追加した。そのほか時代の変化を取り入れた改訂。
そして『「営業のプロによる営業のプロのための本」という軸の部分は変えていない。』(P10)とする。
横組。2色で表現し、文中の言葉を欄外で解説。
目次
※各章が5つの営業戦略となっている
STARATEGY1 一番乗りで成長する
先読み、成長余地、ビッグデータ
STARATEGY2 顧客の望みどおりに売る
マルチチャネル、デジタルチャネル、直接営業、パートナー、新興市場
STARATEGY3 営業に補助エンジンを搭載する
サポート体制、プレセールス、マーケティング、ITの活用
STARATEGY4 実働部隊にフォーカスする
業績管理、営業のDNA
STARATEGY5 売上成長をトップが引っ張る
成長を促す、実現させる
おわりに
謝辞
日本語翻訳版特別解説
日本市場のビジネス慣習や日本企業の文化を踏まえて
マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社 ポール・マクナーニ/倉本由香利/柿本雄太郎
レビュー1
報告書のスタイルで、いまグローバルな競争を展開している企業にとっての「営業」を浮き彫りにしている。テキパキとした語り口はムダが少なく、結論を明確にしている。かといって報告書や教科書とは違う、どちらかとえいば、説得力あるプレゼンを積み重ねているような本になっている。 多くのヒントがちりばめられている本書から、次世代の営業に取り組む企業が少しでも出て来れば、日本経済にも大いに役に立つだろう。その意味で経営者も営業担当者も一読しておきたい本と言える。
とくに「STARATEGY1 一番乗りで成長する」「STARATEGY2 顧客の望みどおりに売る」は、21世紀の営業を考える上で欠かせない要素が盛り込まれていると感じた。その一方、STARATEGY3以降は、比較的オーソドックスで、この部分においては日本の多くの営業関係者は既視感を持って読み進めることができるだろう。
優れている点は著者であるマッキンゼー・アンド・カンパニーのパワーを十分に発揮した、実際の企業の担当者(トップ、役員など)へのインタビューである。ここで注意したいのは、一般的な経済ジャーナリズムに登場するエグゼクティブの語り方ではなく、現場を知る者同士の専門的な話をメインとしていることだろう。おもしろさよりも、実質的な部分に重点が置かれていると感じた。贅沢なつくりだし、的確で、お値打ちと言える。
とはいえ、とてもボリュームがあり、濃い。どのテーマも一朝一夕に取り組むことのできない重要なものだけに、本書を読み物的に楽しく読むことは難しい。
この点から、まずは興味のあるテーマ、そして企業のインタビューなどから読んでいくほうがいいかもしれない。そして熟読を要する部分を見つけて、そこから深掘りしていくといいのではないだろうか。
レビュー2
取り急ぎ、セールスフォース・ドットコム会長兼CEOマーク・ベニオフ氏による「序文」だけでも、読んでみることをオススメする。全世界共通に営業の位置づけが大きく変化してきていることが確認できる。「ビジネススクールでは営業のクラスをまったく受けなくてもMBAを取得できてしまうというのだから信じられない」(P6)との批判も、もっともである。
しかし、科学的な営業は20世紀以降の日本企業でも大きなテーマだったのにもかかわらず、そこには常に「うさんくささ」がつきまとっていたのも事実だ。IT以前のOA(オフィスオートメーション)時代から、延々と「営業の近代化」は、新しい機器やシステムの導入のため、いわばメーカーやコンサルティング会社の営業ツールとして大げさに喧伝されてきたことを、多くの人は知っている。残念なことにシステムを導入しても、営業が改善される例は少なく、むしろマンパワーによる改善の事例に負けることが多かったはずだ。
このため、いまでも日本の営業の多くは、「人」を重視している。モチベーションを高め、営業担当者をプロ野球の選手にたとえるなどして、成功報酬といった処遇、企業へのロイヤリティなどで考える人たちも多い。
本書も、著者がマッキンゼーであり、コンサルティング会社というだけで、警戒してしまう人もいるだろう。「またなにかシステムを売りつけるのか」と。
ただ、本書を公平な観点で見たとき、「STARATEGY1 一番乗りで成長する」「STARATEGY2 顧客の望みどおりに売る」については、注意して読んでおく必要がありそうだ。
「普段は丁寧なサービスを求める大口顧客であっても、些細なやり取りまで対面で行いたいと思っているとは限らない」(P92)といったテーマ一つとっても、簡単に取り組めることではない。人に依存した営業をしているとき、上得意の顧客に対してはいかに対面で勝負するかが問われているはずだが、もしかしたら、顧客はちょっとした時間にスマホで別の商品を注文しているかもしれないのだ。
そもそも、会えない場合も増えてきている。「会えれば必ず売れる」といった神話も崩壊しつつある。
まして、グローバル競争を考えたとき、必死に対面で営業をかけている間に、ネットを通じてお客を奪われることもあり得るのだ。
本書では、リモートセールス(電話など)とフィールドセールス、オンラインとオフラインといったものは対立するのではなく、チームで顧客に当たるものとなってきたことを明確にしている。
これもまた、現状の日本企業では縦割りになっていることが多いはずで、簡単にはチームにしにくいかもしれない。
そして、ぜひそうした日本企業が、次にはこうした本に取り上げられていくことを楽しみにしたい。
『SALES GROWTH ─世界のセールス・エグゼクティブが伝える5つの実績のある戦略─』
トーマス・バウムガルトナー/オマユーン・アタミ/マリア・ヴァルディヴィエソほか著
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