ふわっと口語で愉しむ『言志四録』アーカイブ 言志録1~155

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目次
- 155 リスペクト
- 154 くだらないこと
- 153 夢で試す
- 152 誠実さ
- 151 正しさ
- 150 真実
- 149 信用を重ねる
- 148 信用を得る
- 147 欠けたもの
- 146 もっと議論を
- 145 心と書物
- 144 幅と深さ
- 143 未来
- 142 読書
- 141 歴史
- 140 理論と実践
- 139 凝縮された気持ち
- 138 心を取り戻す
- 137 生と死
- 136 安らかな死
- 135 賢者の死
- 134 遺訓
- 133 遺す
- 132 死の恐れ
- 131 正しい道
- 130 成功率を上げる
- 129 待つ
- 128 痛み
- 127 健全
- 126 食べる
- 125 やむにやまれぬ気持ち
- 124 真心
- 123 時を惜しむ
- 122 本当の自分
- 121 自分を信じる
- 120 自分をなくすな!
- 119 自力
- 118 志の大きさ
- 117 リーダーの誕生
- 116 栄誉と苦痛
- 115 逆境の評価
- 114 サポートへの感謝
- 113 気力を取り戻す
- 112 気力を蓄える
- 111 気力と欲望
- 110 欲望を知る
- 109 善を発揮する
- 108 善悪
- 107 悪に走る
- 106 心の隙間
- 105 いらないものはない
- 104 世襲
- 103 税の本質
- 102 トラブルはリーダーの責任
- 101 人の道を外れたら
- 100 人の道
- 099 気性と気質
- 098 気質の違い
- 097 カオス
- 096 相互作用
- 095 心に従う
- 094 地道
- 093 配置
- 092 花
- 091 月を眺める
- 090 役立てる
- 089 のちのこと
- 088 視線を高く
- 087 サポートの引き際
- 086 未熟さのリスク
- 085 徳のない政治
- 084 流行に惑わされない
- 083 ダメなリーダー
- 082 現場への浸透
- 081 家族の問題
- 080 トップの周辺
- 079 求められるリーダー
- 078 ナチュラル
- 077 音楽の寿命
- 076 リーダーだからこそ
- 075 歌に心を寄せる
- 074 気持ちとバランス
- 073 礼で心を整える
- 072 融合
- 071 無心
- 070 忠告
- 069 人の気持ち
- 068 気持ちを抑える
- 067 利益は誰のもの?
- 066 目先のカネ
- 065 才能と心
- 064 才能
- 063 トラブル
- 062 得意なところを語ってもらおう
- 061 共通の言葉
- 060 書物から離れる
- 059 逃げない気持ち
- 058 体験と学び
- 057 命は語る
- 056 酒の怖い面
- 055 酒の効用
- 054 適量
- 053 元気の素
- 052 安心感と決断力
- 051 リーダーの仕事
- 050 手入れする
- 049 自然からのご褒美
- 048 ベストを尽くす
- 047 利益より目的
- 046 思い上がり
- 045 嫉妬もあるよね
- 044 一歩退く
- 043 いまここにある間違い
- 042 自分の価値
- 041 ひきしめる
- 040 好き嫌い
- 039 初めて会うとき
- 038 言葉と態度
- 037 批判できる人
- 036 とにかく聞こう
- 035 受け入れる前に
- 034 ベテランのように
- 033 鋭さを持とう
- 032 ただ本を読んでもね
- 031 本当に忙しい?
- 030 厳しさと寛容さ
- 029 おおらかさ
- 028 自然の力
- 027 細かいことも大事
- 026 簡単な方法を見つけよう
- 025 有名になりたい
- 024 心の状態を知る
- 023 よく確かめる
- 022 いつも心地よく
- 021 間違った結論
- 020 振り回されないために
- 019 こうなりたい
- 018 最高の結果
- 017 自然・不自然
- 016 育てる力、倒す力
- 015 自分の道
- 014 情報過多からの脱却
- 013 本を読む理由
- 012 過程を知る
- 011 心で計る
- 010 どのように生きるか
- 009 地位で人の優劣は決らない
- 008 生きていく
- 007 成果を出すための学び
- 006 目標は自分で決める
- 005 なんだ、あいつは!
- 004 変化の速度
- 003 誰のために仕事をするの?
- 002 誰から学ぶ?
- 001 運命ってどう思う?
155 リスペクト
さまざまな邪、よこしまな気持ちは、
ふと誰もの心に忍び寄る。
くだらない考えが、
邪を連れてくる。
昔の人は、
「敬は百邪に勝つ」と言ったそうだ。
敬、つつしみ深くウソのない心は、
くだらない考えを断ち切る力となる。
(言志録 155敬能)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(敬は、いわばリスペクト。相手をリスペクトする気持ちがなければ、邪に走りやすい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
154 くだらないこと
くだらないことを考えたり、
やってしまうことを避けたいなら、
心をひとつにして自分を大切にし、
ほかの人たちも大切にする。
そんな気持を持てばいい。
そもそも、くらだらいことを
思いもつかない状態こそ、
心をしっかりを持っている状態だろう。
(言志録 154不起妄念)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(ふと心に緩みが出たとき、心がさまよっているときは要注意)
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153 夢で試す
自分に備わっている誠実さを
確認しておきたいなら、
夢の中で試せばいい。
(言志録 153意之誠否)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(不可解な夢の中に、思いがけず自分の本当の気持ちが現われていることもある)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
152 誠実さ
誠実さは、
自分の中で十分に蓄積していけば、
いずれ大きな影響力となる。
誠実な対応は、
自分ひとりから始まる。
ひとりでいるときに誠実であれば、
だれの前に出ても、
誠実さは伝わるだろう。
場面に合わせて誠実なフリをしても、
ひとりでいるときに誠実でなければ、
その誠実さは伝わらない。
誠実さの蓄積は、
相手に伝わるものなのだ。
(言志録 152蓄厚)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(誠実であることは、まず自分自身に対して誠実であることだ)
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151 正しさ
正しいことをしよう、
とお互いに注意し合うことは、
友情を深めるいい方法だ。
それも、できるだけ丁寧にしたい。
口先だけ、相手に要求するだけでは、
役に立たないばかりか誤解されて
友情を失ってしまうだろう。
(言志録 151責善)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(正しさを相手に求めるからには、まず自分からそれを深く考えて行動していきたい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
150 真実
組織の中にあって
上に対しても下に対しても、
真実をもって、誠実に接する。
そうすれば、
この世の中で
対処できない仕事は
なにひとつない。
(言志録 150信孚)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(同じ目的に向かって活動している集団の中では、真実と誠実が大きな要素となる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
149 信用を重ねる
アクシデントや思いがけない危機といった
突発的な事態のときの言動で
信用を得ることがある。
備えていれば日々、
信用を高めていくこともできる。
また日々の信用の積み重ねの結果、
突発的な事態に直面したとき、
多くの人の信用を得て
的確に対応できるようになる。
(言志録 149臨時之信)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(信用を軸に日々を過ごすことはリーダーのひとつの姿勢となるだろう)
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148 信用を得る
信用を得ることは難しい。
言葉を尽くしても、信用は得られない。
態度や行動が伴って、
はじめて信用につながる。
態度や行動だけでも、
信用されてはいない。
人は、人の心を信じる生き物。
心を人に示すにはどうすればいいのだろう。
とても難しいことだ。
だから信用を得ることは、
難しいのである。
(言志録 148取信於人)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(心を信じるとはどういうことだろう。こうした疑問を絶えず持つことも大切だ)
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147 欠けたもの
孔子は、庭を走って通り過ぎようとする息子に
「詩を学んだか?」と尋ねた。
「まだ」と言うので、孔子は詩を学ばなければ上質な会話ができないと諭した。
さらに「礼は学んだか?」と尋ねた。
「まだ」と言うので、孔子は礼を学ばなければ世の中で通用しないと諭した。
「論語」にあるこのエピソードの時点で、
息子は二十歳ぐらいだったはずだ。
当時は子供を自分で教えず、人に預けて教える習慣があった。
息子は二十歳まで、なにを学んでいたのだろう。
他人に任せるにせよ、
きちんとチェックしておく必要がある。
同時に、学ぶ側としても、
このことを深く考えなくてはならない。
自分はなにを学ぶのか。なにを求められているのか。そして自分はなにを求めるのか。
(言志録 147伯魚)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(学ぶことは、受け身だけでは成立しない。学ぶ意味を自ら考えなければ学びにならない)
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146 もっと議論を
孔子の時代。その門弟たちは、
実によく議論し、率直で、剛健で、
明快だった。
ところがいまの時代はどうだろう。
活発な議論などそっちのけで、
データを集めたり、
エビデンスを見つけることに忙しい。
そんなことに息も絶え絶えになっている。
天と地との差が、そこにはある。
(言志録 146孔門諸子)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(議論を嫌う風潮があるとすれば、その先にあるのは衰退だ)
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145 心と書物
生涯、ひたすら書物から
学び続けるだけだった学者を、
世間は立派な学者とするかもしれない。
しかし、これでは
なにかしら「事」を
成し遂げた人とは言えない。
こういうタイプの人は
自分の心を、
書物の中に置いてきてしまったのだろう。
本来、
自分の心の中に
書物を位置づけるべきなのに。
すべての感覚、感性を、
均等に使って生涯をまっとうしたい。
書物だけを追うことは、
視覚だけを浪費し、
心は疲れてしまう。
自分の心を放り出して
書物から学んでいるだけでは足りないのだ。
(言志録 145有一耆宿)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(インプットとアウトプット、両方を模索し続ける生涯を理想としたい)
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144 幅と深さ
いろいろな知識を身につけると、
人としての幅が広がる。
精神や心について深く知ることで、
人の奥深さがつくられる。
(言志録 144博聞強記)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(幅と深さをどう身につけるかで個性は磨かれる)
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143 未来
過去の歴史の延長として
現在がある。
私たちは歴史から生まれたのだ。
そして未来は、
私たちが体験する歴史だ。
(言志録 143古往)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(過去を歴史的な視点で見るだけではなく、未来にも思いを馳せたい)
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142 読書
本を読むとき、
そこに登場する優れた人たちや、
すばらしい人たちの多くは、
すでにこの世にいないのだ。
そう思うと、とても悲しくなる。
それでも、
過去の人々の精神はなおも
書物の中に息づいている。
そう思えば気持ちが高ぶり、
元気も貰える。
(言志録 142吾方読書)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(本を読むことで、時空を超えて得られるものは多い)
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141 歴史
歴史は、その表側しか残らない。
内側にあった真実は、
消えてしまう。
歴史を学ぶときは、
内側を探し出す姿勢が大切だ。
(言志録 141一部歴史)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(表面だけで語るのではなく、さらに踏み込んで歴史を見るようにしたい)
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140 理論と実践
優れた古典から学ぶとき、
あるいは最近の書籍から考え方を学ぶとき、
必ず自分の体験と照らそう。
これまでに出会った人、
経験した事と結びつけて、
「いま」のこととして受け止めるのだ。
そうすれば、
いま起きている問題に対処するとき、
学んだことを結びつけて
よりよい方法で取り組める。
理論と実践を結びつける工夫をすれば、
学問は現実から遊離しない。
(言志録 140方読経時)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(学び方を工夫すれば、学びを自分のものにできる)
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139 凝縮された気持ち
幽霊が存在するとすれば、
生きている間に強い気持ちが凝縮され、
死後も残るのかもしれない。
強く思い、憤ることで
気持ちは氷のように固まるのかもしれない。
肉体が失われても
その気持ちだけが消えずに残るのだ。
水は器を壊しても、氷となる。
しかし、氷はやがて溶けていく。
一度は固まった気持ちも、
やがて溶けて消えていくのだろう。
(言志録 139亡霊)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(死後にも残る志はある。誰かが引き継ぐか。あるいは跡形もなく消えて行くのか)
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138 心を取り戻す
死が怖いのは、
この世に生まれたあとに
取得した感情のせいだ。
体を得て、
はじめて体を失う恐怖を覚える。
生まれる前の心だけのとき、
死を知らない。
体から離れて、
心だけを考えることはできるだろうか。
この世に生きている間、
死を恐れている間にこそ、
本来の心を取り戻すような
境地を得たいものだ。
それは、生まれる前の心に
近づくことだから。
(言志録 138畏死者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(心と体を分けて考えることは可能だろうか。体の消滅とともに心も消滅するのだろうか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
137 生と死
生きている物はみな、死を恐れる。
しかし人間は、
死を恐れない理由を
考えることができる。
生命は宇宙から生じたものだ。
ならば死も生も、宇宙の意志である。
その意思に従えばよい。
生まれた瞬間は、喜びを知らないように、
死ぬ瞬間に悲しむことはない。
心も宇宙から得たものだろう。
体は心の器である。
形がある限り心はそこに留まり、
体が失われていく時、
心は宇宙に戻る。
心は死生の外にある。
朝があって夜がある。
生があって死がある。
春があれば夏、秋、そして冬が来る。
冬のあとにはまた春が来る。
生と死もこれと同じようなものだ。
(言志録 137生物)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(達観できる人もいれば、できない人もいるけれど、どちらにせよ結末はやってくる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
136 安らかな死
高齢になり病もなく
自然に元気を失って死ぬとすれば、
紛れもない安らかな死といっていいだろう。
では、そのほかの死はどうだろう。
ガッツのある人や、
正しい道だけを目指す人が、
突破すべき問題に直面したとき。
死をも恐れぬ行動に出たならば、
それは立派な死とされるだろう。
血気にはやり
死に急ぐような人は、よくない。
いざというときに
命を惜しむ人よりも悪い。
宗教に生きる人の中には、
平然と死を受け入れる人もいる。
宗教そのものが
死への恐怖を克服するためにあるとすれば、
その人の本質として死を受け入れたのか、
宗教のために受け入れたのか、
区別がつかないだろう。
(言志録 136気節之士)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(誰もが望むやすらかな死。だが、具体的に描いている人は少ないだろう)
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135 賢者の死
とくに大きなことをなした
わけでもない人でも、
死に際して
平然と臨み、きちんと遺言をして
賢者と同じ死を迎えることがある。
どんな人でも、
死に際しては、
それぞれに重みがある。
もっとも、
病気の症状として
そうせざるを得ない場合もある。
(言志録 135常人)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(後世に伝わるのは生き方であり、死に方は希なところを見ると、死は万人に平等なのかもしれない)
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134 遺訓
本当に役に立ち、
いつの時代にも通用する遺訓はある。
その一方で、
どれだけすぐれた人だったとしても、
偉業を強調したいからと、
死後、誰かが遺訓めいたものを
つけ足したとしても、
なんの名誉にもならない。
(言志録 134堯舜文王)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(のちの人は亡くなった人をより大きく見せたがり、そこに私欲が入りがち)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
133 遺す
死を前にしても
それを当然のものとして受け入れ、
死を恐れることを恥じ、
安らかに対応できることを願うなら、
優れた人と言われるだろう。
気持ちの乱れもほとんどないだろうし、
後世に教訓が遺され、
傾聴するに値するに違いない。
生死は一日の朝夕と同じと達観し、
生き方そのものが遺訓となり、
特になにかを遺さずとも、
存在そのものが教訓になるような人は、
さらにすごい人と言えるだろう。
生とか死にとらわれない。
そういう人を目指したい。
(言志録 133賢者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(生き方、死に方を論ずるのもいいが、存在そのものにこだわった方がさらにいいのではないか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
132 死の恐れ
自身の死に対しても、
心が安らかでいられるのが、
すぐれた人と言える。
なぜなら、
死の意味を知り、
死さえも自分の役割の一つと
理解しているから。
いたずらに死を恐れるのは、
そこまで考えの至らない人だ。
(言志録 132聖人安死)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自身の死さえも、生まれてきた意味を考え、役割を感じることができれば理想的だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
131 正しい道
広大な宇宙にあっても、
正しい道は一つではないか?
先進的な地域もあれば、
なかなか発展できない地域もある。
どのような地域にあっても、
人はそれぞれの心に従って
正しい道を目指そうとする。
宇宙はなにも差別していない。
正しい道には一貫性がある。
歴史の長い国だから特別だろうか?
蓄積の多さで特別になれるのだろうか?
どんな地域でも特別なものではない。
他の成功例ばかりを重視しても、
特別な地域になれるわけではない。
どんな言葉を話そうと、
どんな文化であろうと、
私たちは生まれた場所に生きて、
そして死んでいく。
宇宙の正道は
どんな地域にも、どんな人にも、
等しく一貫している。
(言志録 131茫茫宇宙)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(目の前のことにばかりふりまわされることなく、もっと大きな視野で考えてみよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
130 成功率を上げる
急いでことにあたると失敗しやすい。
慌てて行動に出ても失敗しやすい。
目的を達成する確率を高めるには、
穏やかにじっくりと取り組むことだ。
(言志録 130急迫)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(わかっていても、なかなか実行できないことの一つだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
129 待つ
いま雨が降っている。
だが、待てば晴れる。
待たなければ、濡れる。
(言志録 129需雨天也)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(待つべきか、待たずに行くべきか。そこで未来は変わる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
128 痛み
病気がちな人は、
他人の痛みを感じにくくなる。
心を病んでいる人も
他人の痛みに鈍感になる。
(言志録 128身恒病者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(リーダーは敏感でありたい。そのためには健康を保っておきたい。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
127 健全
理想的な人とは、身心ともに健全な状態。
病と無縁のように見える。
それは、身心を健全に保つために
摂生するからだ。
そこに思いが及ばない人は、
健全さが保てなくなる。
病気ではないのに、
病んでいるように見えてしまう。
(言志録 127聖人)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(あくまで理想論だが。病を努力だけで避けることはできない。とはいえ、健全であるための努力はしたいものだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
126 食べる
なにかを成し遂げたい人、
志のある人は、
食べ物に気を配る。
それは当然のことだ。
食べ物は薬と同じだから。
薬を調合するように
口にするものに気を配り、
適量を考える。
(言志録 126周官)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(血肉になるものに気を配ることが目標の達成には不可欠だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
125 やむにやまれぬ気持ち
やむにやまれぬ気持ちで
ことにあたれば、
きっと、行き詰ることはない。
曲げられることのない
まっすぐな道を進めば、
きっと、危ういことにはならない。
(言志録 125動於不可)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(最初からストレートに、シンプルに考えて行動することで困難を回避できる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
124 真心
雲は自然に集まり、消えていく。
風雨は自然に激しくなり、弱くなる。
雷は自然に光り、そして落ちる。
自然を観察していると、
どの現象も
やむを得ず行動しているように見える。
真心からの行動は、
こうした自然の現象に似ている。
やむを得ずの行動となる。
(言志録 124雲烟)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(心から生まれた行動は、作為的ではないはずだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
123 時を惜しむ
若くて元気なうちは、
時間を惜しむようなことはない。
あったとしても、
取り返しがつかないほどではない。
四十歳を過ぎる頃になれば、
時間が去っていくのを
惜しむようになっているだろう。
もう、かつての勢いや元気ではない。
なにかを学ぼうとするなら
若い頃に目標を立てて始めよう。
あとになって悔やんでも遅い。
(言志録 123人方少壮)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(やりたいことに一日の大半を使える年齢は貴重。そこで人生は大きく変わる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
122 本当の自分
大自然から生まれた
本当の自分がいる。
いま見えている姿としての
仮の自分がいる。
どちらも自分だ。
それを理解しておくことだ。
(言志録 122有本然)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(どちらの自分に正直に生きるべきだろうか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
121 自分を信じる
独立した存在であること、
自分を信じること、
それが最も重要だ。
誰かに頼ること、
強い者に媚びることは、
寒い日に暖まりたいからと、
炎に近づきすぎてしまうのと同じ
危険性がある。
(言志録 121士貴)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(他者との距離感に常に気を配りたい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
120 自分をなくすな!
自分を見失ったり、
自信を失うと、
あなたの周りにいる人たちを
失うことになる。
こうした人たちを失ったら
すべてを失う。
(言志録 120喪己)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自分を保つこと、ある程度の自信を秘めることは自分のためだけではない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
119 自力
とてつもない大事業を成し遂げよう、
と思い立ったとき、
頼りになるのは、自分一人である。
自分の中にあるものだけで、
成し遂げる覚悟が必要だ。
(言志録 119士当恃)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自身の強い思いがなければ、自分の思い描いた未来はやってこない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
118 志の大きさ
いまの時代にナンバーワンを目指すことは、
とても大きな志だろう。
でも、それではまだ足りない。
この同時代に生きている人間の数には限りがある。
その中でのナンバーワンとなることは、
不可能ではない。
一方、歴史を見てみよう。
どの時代にも多くのナンバーワンがいて、
その中には到底かなわないほど、
優れた人たちもいる。
誰でも死んでしまえば、
過去の人となる。
歴史に残るナンバーワンたちと比べたとき、
成し遂げたことがどれほどのものか。
比較されることになる。
志というものは、
時代が変わっても、歴史的にも
ナンバーワンを目指すぐらいの大きさが必要だ。
(言志録 118上欲為世間)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(志は大きく持つ。妥協して小さな志にしてしまわないことだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
117 リーダーの誕生
古代、人々はまだ組織的ではなく、
社会性もあまり意識していなかった頃、
トラブルが絶えなかったはずだ。
弱肉強食。強い者がトップに立ち、
強い者の都合でねじ伏せていただろう。
しかし、そのうち、賢い者が現れて、
調整し裁定を下すようになる。
それがうまくいけばいくほど、
広範囲にその人物の存在が伝わり、
多くの問題が持ち込まれるようになる。
その人物は調整や裁定に専念することになり、
頼みごとをする人たちによって
食べ物や金銭が提供されるようになる。
こうしてリーダーが生まれたのだろう。
(言志録 117上古之時)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(世の中の役に立ってはじめてリーダーとなる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
116 栄誉と苦痛
素晴らしい人物だ、
と誰もが誉める人がいる。
だが、もしかするとその人は、
受けた栄誉に苦しんでいるかもしれない。
たとえば、悪名高いリーダーに仕えた
優秀な部下はどうだろうか?
その人は、自分が信じていたリーダーの
悪名をなんとかしようと必死に働き
その結果、
後世に名を残すほどになったのかもしれない。
しかし、それは本意ではなかったはずだ。
その人の受けた栄誉は、
リーダーの悪名とセットで語られ続けることになるだろう。いつまでも……。
そんなことのために、
懸命に取り組んだわけではなかったのに。
(言志録 116古今以舜)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(栄誉を受けることが、必ずしも喜びであるとは限らない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
115 逆境の評価
有名になる人の中には、
不幸な生い立ちや大きな失敗など、
逆境をはね除けた経験が
注目されることがある。
確かに、逆境を跳ね除けて、
組織、仲間のために
活躍する姿はすばらしい。
だからといって、
逆境にあったことばかりを評価すると
かえって本質を見誤る。
評価すべきは、
そうした人物を育てた会社や組織、
リーダー、仲間であるべきだろう。
私たちは、
いま逆境にある人たちを
活躍できる人として育てることができる。
その部分をもっと評価したい。
(言志録 115孝名之著)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(境遇は興味深いとしても、大切なことは結果につながった行動や支援である)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
114 サポートへの感謝
サポートしてくれる人たちを、
感謝し誉めよう。
サポートの気持ちに対して、
感謝し誉めるのである。
サポーターの素晴らしさは、
無私の気持ちにある。
サポートした相手が多くの賞賛を得ることが喜びであり、
サポーター自身は、わずかな賞賛でも名誉と感じるだろう。
サポートする気持ちは、
サポートした相手が少しでもいい成果、
評価を手にすることで報われる。
サポートしてくれた人たちを、
あまりにも誉め過ぎることは、
まるで誉められるためにサポートしたように見えるので、
むしろサポーターたちは不名誉に感じるだろう。
(言志録 114近頃賞孝子)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(お礼をする、感謝の気持ちを表すことは大切なことだが、適切なお礼、適切な感謝を現わすよう心を砕きたいものだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
113 気力を取り戻す
水を沸かすと、水は蒸気となって
拡散していく。
ふたをすると、蒸気はふたにあたって、
水滴となって戻ってくる。
強い欲望も、
蒸気のように発散してしまうと、
ただ逃げていくだけだ。
欲望にふたをすれば、
気力となって戻ってくる。
気力が戻れば、
心も体も、回復をする。
(言志録 113鍋内之湯)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(欲望を実現するために必要な気力を、取り戻す工夫も必要だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
112 気力を蓄える
草や木にも欲望はある。
それは、たくさん陽を浴びて雨を受けて生い茂ることである。
しかし枝葉をいたずらに伸ばすと、
気力はそこから漏れていく。
枝葉を適度に刈り込まれた樹木は、
気力を幹に蓄えて、
枝や幹を太くし、
しっかりと根を張ることができる。
私たちも、
欲望のままに枝葉を増やすような
いたずらな発散は、
気力を使い尽くしてしまうだろう。
欲望をセーブし、枝葉を刈り込み、
気力を自身の内側に蓄えることで、
心も、体も健康を保てる。
(言志録 112草木之有生気)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(気力を蓄えることで息長く活動を続けていくことができる)
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111 気力と欲望
私たちの体が、この世の物質から生まれたように
生きる気力そのもののは、
自然からの恵である。
気力が満ちている限り、
強い欲望もある。
自然は善でもあり悪でもある。
欲望は善にも悪にもなる。
(言志録 111人身之生気)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(欲望と気力。その使い方を学ぼう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
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M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
110 欲望を知る
人はみな欲望がある。
それが「悪」を生む。
もともと本性は「善」だとしても、
なぜ「悪」を生みだす可能性を
人間は備えているのだろうか。
欲望は役に立つのだろうか?
欲望は人間の生き生きとした気力である。
欲望があるから生き、
消滅すれば死ぬだけだ。
体中から欲望がみなぎり、
それを抑えることができなくなったとき
「悪」に走ることがある。
生きている限り、欲望は失われない。
ただ、その欲望を「善」として活かすこと。
そこで人間の質は決まる。
(言志録 110人不能無欲)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(欲望によって悪に走ることも自覚しておくことは、自分を高めることにもなる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
109 善を発揮する
私たちの心が、もともと善であったとしても、
体がなければ、
その善を発揮することはむずかしくなる。
体は、
善を発揮するために必要だ。
しかし、体が前面に出てしまうと、
いいこともするけれども、
時には行き過ぎたり、
やり遂げられなかったりして、
結果的に悪へ流れてしまうことがある。
心のままに善のみ発揮できる人は、
聖人のような限られた人だけだろう。
そう考えれば、
体も、もともと善だったのかもしれない。
(言志録 109性善雖)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(考えていることと行動を一致させ、いいことをしていくのは簡単ではない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
108 善悪
私たちの体は物質で作られている。
物質はどんなに複雑でも、形がある。
形があるだけに、不純物を排除するのが難しく、変化も困難だ。
心はどこから来たのだろう。
それは宇宙の起源、カオスに遡るのではないだろうか。
カオスに定まった形はない。
たとえ純粋であっても、善であっても、
固まっていない。
だから善悪の両面を備えている。
カオスからこの世が産まれ、
自然現象が発生し、
風雨や海、山を作り、生き物を、人間の肉体を生み出した。
風雨が猛威をふるい、破壊することもある。
風雨がなければ生きて行けない生き物もある。
善にもなれば悪にもなる。
このような悪は、本来の悪というよりも
活力があふれ過ぎた結果かもしれない。
私たちの心がたとえ純粋に善であっても、
体には善悪の両面が備わっていて、それを簡単に変えることができない。
これは、そもそもの起源からそうなっているのかもしれない。
(言志録 108性禀諸天)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(善悪を根本に遡ることは難しく、たとえ根源まで辿り着けても悪だけを排除することは難しい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
107 悪に走る
人は生まれながらに悪人ではないはず。
それなのにどうして、
悪に走ってしまうのだろう。
耳があるから、甘い言葉に誘われる。
目があるから、よからぬものも見たくなる。
鼻があるから、よい香りに惑わされる。
口があるから、うまいものを求める。
手足があるから、少しでも楽がしたくなる。
肉体があるから、悪いことをしたくなるのだろうか?
もし肉体の状態が違っていても、
人間は悪に走るだろうか。
それでも悪に走るなら、
人間の本性を取り除けば、
悪を取り除けるのだろうか。
もう一度、
そこを考えてみてはどうだろう。
(言志録 107欲知性之善)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人から悪だけを取り除くことなどできるのだろうか?)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
106 心の隙間
入学式、入社式、始業式、毎朝の朝礼などなど、
いろいろな行事がある。
行事があると、いつも以上に忙しくなる。
その大半は、やらなくてもいいような
無駄なことに思えるときもある。
でも、この無駄に思える行事も、
役に立っているのだ。
その行事をすべて取りやめたとき、
私達はそれより有益なことをやれるだろうか。
人間、暇になると、大したことはできないものである。
暇なあまり、悪事に走ることもある。
心の隙間を作らないためには、
忙しさを生み出す行事も大切なのだ。
(言志録 106凡年間)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(私たち社会は工夫をしてきた。大事なことは、行事を形骸化させないことかもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
105 いらないものはない
この世界は理屈だけで成り立っているわけではない。
つい、
「あれはいらない」
「そんな無駄なことはするな」
と判断しがちだが、
この世界に、いらないものはない。
いらない仕事もない。
無駄や無用があふれているように見えるなら、
その意味を考えてみよう。
「あれはいらない」「そんな無駄なことはするな」と言う人も、
ヘアスタイルを気にしたりヒゲを伸ばしてみたりするのはなぜだろう。
そこに、どんな理屈や合理性があるのか。
(言志録 105天下事物)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(なにかを否定したくなるとき、自分を振り返ってみてはどうだろう)
104 世襲
自分の財産を子に譲ることで、
国を守ろうとした方法は、
そもそもは、利己的なものではなく
安定させるための合理的な方法だった。
(言志録 104夏后氏)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だが、安定の役に立たない世襲もあれば、安定というより固定しかもたらさない世襲もあるところを見ると、必ずしも最善とは言えない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
103 税の本質
税金は法律に則って徴収される。
税率も法律で決められている。
税金は高いかもしれないし、安いかもしれない。
どんな税でも、税は税だ。
素晴らしい仕事をして得た収入から
もたされた税も、税である。
仲間たちの血と汗と涙で得た収入から
もたされた税も、税である。
税率や税法や徴収方法が大事なのではない。
税そのものの尊さが大事なのだ。
(言志録 103征止十一)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(税に関する議論ではともすれば本質が忘れ去られる傾向にある)
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102 トラブルはリーダーの責任
「禍は下から」という言葉がある。
トラブルは身分の低い者が起こすというのだ。
もしそんなことを信じているとすれば、
そんなリーダーのいる組織は滅びる。
トラブルは地位の高い人たちによって
引き起こされるのである。
地位の低い人たちがトラブルの発端と見えても、
地位の高い人たちに問題があるから
トラブルとなったのである。
(言志録 102諺云)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(組織内での力の働き、作用を注視することがリーダーの役割)
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101 人の道を外れたら
もしも親兄弟、友人など、
大切にしなければならない人たちが
人の道を踏み外したら……。
追認したり放置すれば、
自分も人の道を外れることになる。
苦痛を伴う選択かもしれないが、
人の道を守るために、
相手が深い関係にある人たちであっても、
厳しい対応をしていかなくてはならない。
(言志録 101或疑)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(それぐらい、まず守るべきは人の道だ)
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100 人の道
リーダーになると、
組織や環境が一番大切だと思いがちだ。
だけど人の道は、
組織や環境よりも重い。
組織も環境も
必要なら捨てたり壊すべきもの。
人の道は、
捨てたり壊すものではない。
(言志録 100人君)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(目の前にある大切なものだけではなく、より広い視野、高い視点で考えることをリーダーは求められる)
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佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
099 気性と気質
気性も気質もほぼ意味は同じで、
人間の生まれつき備わった性質のこと。
あえて違いを考えるとすれば
気性は多くの人に共通している部分。
だれもが生まれながらにして備えている。
そこに優劣はない。
気質は、人によって違う部分と見ることができないだろうか。
そこには優劣が生じてくる。
気質を優れたものにするには
教育が不可欠だ。
その教育は、
気性という共通の基盤があるからこそ、
効果を発揮するものなのだけれど。
(言志録 99性同而質異)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人には優劣のつけられない根本的な部分と、教育によっていくらでも優れたものにできる部分がある)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
098 気質の違い
カオスから生じた気が集まって
宇宙を生み出し地球をつくり、
私たちの身体や心になっていく。
ただし、集まり方はそれぞれに違う。
人によっても違う。
だから考え方や発言なども
ちょっとずつ違ってくる。
筆跡も、絵を描いても
なにかを作り出しても同じにはならず、
店も会社もそれぞれに違ってくる。
子供の時の顔つきから、
徐々に大人になるにつれて変貌していくのも、
内側にある気が体の中で浸透し、拡大していくからかもしれない。
チームや組織や国家も、集まった人たちの気によって、それぞれの顔となっていく。
だから、その人の顔つきや書いた文字や
創り出したものから、
その人の気質を推測できるはずだ。
(言志録 98気有自然形)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(顔つきや言動から私たちはさまざまな推測を巡らすのも、そもそもお互いに違いがあるからだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
097 カオス
すべてのものには由来がある。
どこから来て、どこへ行くのか。
由来から考えることができる。
私たちの身体は、父母から得た。
では、心はどこから来たのだろう。
身体は、この世界からその必要な物質を集めて形作られている。
心は、宇宙の根源から来たのかもしれない。
身体が成長するにつれて心が宿り、
いろいろなことに興味を持ち理解しようとし、
感動する。
宇宙の根源から離れる時、
心も停止するのだろう。
では宇宙の根源とはなにか?
それはカオスではないか。
心はカオスから生まれてくるのだ。
(言志録 97挙目)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(無から有が生まれるというよりも、混沌の中から生まれるのかもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
096 相互作用
私たちのいる世界が、
ある法則に従っているとすれば、
そうした法則に従っていこうと
思っている人たちが多いからではないか。
私たちの身体が、
自身の心に従っているとすれば、
身体もまた心に従うことを求めているからではないか。
(言志録 96使地能)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(この世界は、相互に働く力で成り立っているのかもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
095 心に従う
私たちの耳や目や口や鼻、
手足などの肉体は、
心に従っている。
それぞれの役目は、
心とつながっている。
私たちのいる世界は、
自然の法則に従っている。
それは、心と体の関係に似ている。
(言志録 95耳目口鼻)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(なにに従い、なにに逆らうか。よく考えて行動しよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
094 地道
手堅く着実な生き方を続けるには、
どうすればいいのだろう。
まず、人を尊重することだ。
そして自然の法則に従いながら、
理にかなった行動を取り続けることだ。
(言志録 94人須守)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(地道にやるといっても継続することは難しい。なにをもって地道なのか、はっきりさせておかないと間違える)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
093 配置
自然のままの景色を眺めてみよう。
山や川の姿は、そのままで配置もよく
人が調整をする必要もない。
(言志録 93布置得宜)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自然な配置はピタッと決まる。作為ある配置はそれだけ難しくなる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
092 花
どうしようもないぐらい
内側から
こみあげてくるものが、
ついに
外へあふれ出す。
それが花だ。
(言志録 92薄於不得己)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(咲きほこるためのエネルギーは誰も知らないところから生まれてくる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
091 月を眺める
月はそこにあるものだから、
眺めたとしても何も感じないかもしれない。
もしも、限りない宇宙に思いを馳せれば、
月を眺めて自分の存在を振り返り、
いろいろ感じたり思うこともあるはずだ。
(言志録 91人看月)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(なにげない存在、自分から遠い存在も、こちらの気持ちしだいでさまざまな気持ちを掻き立ててくれる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
090 役立てる
寿命の尽きたものは、
生きるもののために役に立つ。
過ぎ去った事は、
将来のために役に立つ。
(言志録 90己死之物)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(終わりは消滅ではなく、次のためにつながっていく)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
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参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
089 のちのこと
生きている間に悪口や称賛を得ることは、
一喜一憂するようなことではない。
心配すべきは、
死んだのちの悪口や称賛だ。
死んだ者は、
反論できないからだ。
いま自分が得ている利益や損失は、
一喜一憂するようなことではない。
後世に及ぶ利益や損失こそ、
よく考えておきたいものだ。
(言志録 89当今之毀誉)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(時間軸を持って日々の優先順位を決めよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
088 視線を高く
できる限り視線は高くしておく。
高いところに目を向けておこう。
そうすれば、
迷うことは少ないからである。
(言志録 88著眼高)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(どこを見て行動するかは、とても重要だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
087 サポートの引き際
未熟なリーダーを本気で支えるつもりなら、
リーダーの成長につれて、
力をリーダーに集中させていくことだ。
そして、
サポートが必要なくなれば、自分の本来の役割に専念する。
メリットがいっぱいあるからと、
サポート役をなんとかして続けよう、
などと思わないことだ。
(言志録 87当託孤)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(サポートは必要に迫られて始める。それがいつしか自分の利益のために続けていないだろうか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
086 未熟さのリスク
未熟な人間がリーダーとなったときの最大のリスクは、
実権がその下の者へ移ってしまうこと。
一度、力がリーダーより下の誰かに移ってしまうと取り戻すことは難しい。
確かに、未熟なリーダーも徐々に成熟していくと期待はできる。
ただ、せっかく成熟しても実権を取り戻すことは困難で、
のちのちまで組織に悪影響が及んでしまう。
たまたま実権を握った下の者が優秀な人物であった場合だけ、
組織はこの悪影響から逃れることができる。
(言志録 86大臣弄)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だから、誰がリーダーになるかは、組織にとってとてつもなく重要になる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
085 徳のない政治
正しい方向で政治をするとき、
権力争いは起きない。
徳が中心の政治となり、
力が中心の政治ではなくなる。
権力争いは、
徳のない政治から始まる。
トップに徳のあるとき、
政権は揺るがない。
トップに力だけしかないとき、
下の者に政権を奪われる。
政治を行うなら、
徳と礼を第一に考えておきたい。
(言志録 85邦有道)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(国を動かすだけではなく、さまざまな組織に政治は生じる。政治は権力だけでは成り立たない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
084 流行に惑わされない
リーダーとして、世の中の事情に
通じていた方がいい。
だからといって、
流行に乗ったりどっぷり漬かる必要はない。
(言志録 84下情)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(リーダーは、いまの流行の先を見通す力をつけたい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
083 ダメなリーダー
一番詳しい人の言うことは聞かないで、
二番手、三番手の話を信じる。
責任のある人の話を聞かず、
無責任な人たちの話を信じる。
ダメなリーダーとは、
そんな人のことだ。
(言志録 83不信大臣)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(リーダーは自分の欲で情報を選択しない。自分の狡さで人を選ばない。その覚悟が必要とされるのではないか。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
082 現場への浸透
リーダーになったら、
1から10まで指示するようなやり方は
あまりいいことではない。
それぞれの現場を任せた人が、
きちんと必要な指示を出して実行できるように、
道筋、環境を整えていくことで、
リーダーの存在は現場にも浸透する。
(言志録 82人主事毎)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(リーダーの威厳は結果として生まれるもので、威厳を持たせるためにする行動はかえって威厳を損なうことが多い)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
081 家族の問題
リーダーとして部下を持つと、
家族までも話題になることが多くなる。
リーダーが力を発揮し、人を教え導くためには、
自分の家族に目を向け、問題があれば的確に対応しておきたい。
(言志録 81人君閨門)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自分ひとりで仕事をしていると思いがち。家族は力にもなるしマイナスに作用することもある)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
080 トップの周辺
組織をまとめるには、
トップの周辺こそしっかり統治したい。
トップの直属の組織に、
過剰な豪華さやいい加減な雰囲気は、あってはならない。
ムダな経費にも目を光らせる。
真っ先にトップに近いところから浄化することだ。
(言志録 80為邦下手処)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(身内意識から手をつけにくいだろうが、トップの周辺から腐敗は始まる。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
079 求められるリーダー
理解する力とスピード。
判断する力とスピード。
その両方を持つ人は、近寄りがたい存在かもしれない。
それでいて、実際には素直で控え目な人だとすれば……。
そんなリーダーこそ求められている。
(言志録 79聡明而重厚)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(矛盾を乗り越える大きさこそが、リーダーの魅力かもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
078 ナチュラル
吐息も音楽だ。
笑いさざめくことも音楽だ。
手のしぐさや足の運びといった
ちょっとした行動も礼となるように。
(言志録 78一気息)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(ことさら意図せず、音楽も礼もナチュラルな人の日常に存在している)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
077 音楽の寿命
古い音楽は滅びていくのだろうか。
音楽はいつ始まったのだろう。
かつての素晴らしい人たちが、音楽を生み出したのだとしたら、
その人の死んだのちも音楽が残っているのはなぜだろう。
優れた人の感覚が音楽となって生まれ、
楽器と調和する。
人はそれを聴いて感動する。
優れた感覚が、音楽にはこめられている。
その人が去り真似する人だけが残っても、
感覚は食い違い、やがて力を失う。
寿命がある。生まれたものはみな死ぬ。
形あるものは壊れる。
音楽だって、長く保てるはずもない。
それでも生み出された音階や和音は、
自然の恵みのように、存在し続ける。
本来の美しい音から生まれた音楽は、
始めも終わりもなく永く存在し続ける。
(言志録 77古楽不能不亡)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(廃れるもの、残ち続けるもの。その差はどこにあるのだろう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
076 リーダーだからこそ
リーダーだからこそ、
基本的な技術の向上や勉強は続けよう。
いつ戦いが始まるかわからないから、
リーダーも基本的な戦う方法を忘れずに
日々鍛錬する。
基本をしっかりやることは、
心理的にも充実し、元気につながる。
忘れないためだけではない。
決断を下すときの自信は、
こうした日々の行動から生まれる。
(言志録 76人君当令)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(日々、やるべきことを愚直にやる。それを忘れないこと)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
075 歌に心を寄せる
私たちは喜びを発散したい。
優れた才能によって音楽が生み出され
人々もそれを楽しむ。
それは音楽に溺れているわけではない。
芸術性の高い音楽は、
日常の中ではあまりパワーを発揮しないかもしれない。
それでも、わかる人たちの間では
演奏され聴かれ続けていく。
もっと身近な音楽は、
私たちの間で広く流行する。
芸術性はそれほどないように見える。
しかしこうした音楽も必要だ。
高尚な音楽ばかりでは、
多くの人たちが心を寄せ合って楽しみ
喜びを発散できない。
発散することが表なら、
抑制することは裏だ。
表を抑えてしまうと
裏が栄えて窮屈で陰湿になる。
表を抑えすぎなければ、
裏に入り込まずに済む。
(言志録 75人心不可無歓楽発揚処)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(音楽には大事な役割がある)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
074 気持ちとバランス
平和な時が長くなると、
娯楽に費やす時間も増える。
それはとても自然なことだ。
誰もが楽しみ、飲み食いし、歌い踊る。
安易に娯楽を禁止したり制限しないことだ。
もし強引に禁止すれば、人々の気持ちは暗くなり、発散する場を失ってしまう。
悪い心が増殖し、世の中も悪くなる。
優れたリーダーは、人々の気持ちを理解する。
娯楽を巧みに奨励し抑制し、バランスを取っていく。
人々の気持ちが明るく保てるように、気を配る。
それが時代に合った対応となる。
(言志録 74治安日久)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人の気持ちをよく理解できるリーダーを選ぶことだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
073 礼で心を整える
人は古来から、なにか悪いことが起きたり
気持ちの塞がった時に、
奇抜な格好をしたり、おかしな歌や踊りで気を晴らしてきた。
春なのに気持ちが冬のままなこともある。
夏というのに秋のような心になることもある。
気持ちと現実の調和が崩れると、
生きることまで辛くなってしまう。
心の調和を取り戻すために、儀式や祭り、音楽はある。
私たちには集まり、楽しみ、笑う場が必要だ。
それによって、崩れてしまった心を再び整えていく。
礼と楽しみを一致させることで、
そんな効果がある。
(言志録 73古者方相氏為儺)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(礼は堅苦しい形式だ。だが、そこには古代の人たちなりの心を取り戻す作用もあったのではないか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
072 融合
音楽や芸能の楽しみは、
人を喜ばせたりワクワクさせたりして、
心をのびのびとさせてくれる。
一方、礼は、
日々の身だしなみや行ないを意識させ、
心を引き締めてくれる。
この二つを融合できたら、
礼にかなった日々を過ごしながら、
のびやかな喜びを得られるようになる。
(言志録 72使人懽欣鼓舞)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(どちらかを選ぶのではない。融合させることでさらにいい道へ進むことができる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
071 無心
忠告を聞くときは、
心をからっぽにしていよう。
忠告をするときも、
心をからっぽにしておこう。
(言志録 71聞諌者固須虚懐)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(無心になれるかどうか試される場面だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
070 忠告
人に忠告する時は、
誠意の塊となろう。
ほんの少しでも怒りや
憎しみの混ざり込んだ忠告は、
拒絶されてしまうだろう。
(言志録 70凡欲諌人)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(日頃から誠意をもって人に対応したいものだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
069 人の気持ち
自分の気持ちを知ることと
他人の気持ちを知ることは
同じだ。
あなたが感じたことは
相手も感じている。
だから、
自分に嘘をつくことと
他人に嘘をつくことも
同じなのだ。
(言志録 69治己与己人)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(気持ちは自分が思っている以上に他人に伝わっていくものだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
068 気持ちを抑える
気持ちのままに行動することもある。
が、衝動の抑制も大切だ。
目標を達成したときに増長することなく、
適度なところで抑えることも大切だ。
社会の中で、快適に過ごすためには
気持ちを上手に抑えることだ。
(言志録 68循情而制情)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(ほどよさを知ろう)
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067 利益は誰のもの?
利益は、誰もが同じように
受け取ることができる。
利益を得ることは、悪いことではない。
ただ、
独占してしまうと恨まれる。
(言志録 67利者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人の恨みは恐ろしい)
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066 目先のカネ
地位や高給を提示されたとしても、
熟考して辞退することはできる。
しかし、
すぐそこに見えているカネの誘惑に、
心を動かされずにいることは難しいものだ。
(言志録 66辞爵禄易)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(想像できないカネは冷静に判断できたとしても、いまそこにあるカネの力はあなどれない。誘惑に負けるな)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
065 才能と心
どういうわけか、
心がねじれていても、
才能や知恵で優れた者がいる。
周囲にどれだけ賢者がいても
そのような人の心を正すことはできない。
ただし、いくら才能があっても、
知恵者であっても、
心が伴わない者は自ら滅びる。
才能には、
そんな恐ろしさも秘められている。
(言志録 65古今為姦悪)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(心の清さと才能は関係ないが、才能を生かすためにぜひ心も整えてほしいものだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
064 才能
才能は強力な武器だ。
いい方向に才能を使えば、
自分を守ってくれる。
悪い方向に才能を使えば、
自分を殺すだろう。
(言志録 64才猶剣)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(諸刃の剣となる才能。才能を生かすための才能も必要だろうか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
063 トラブル
どうしてもやりたくて、
自分がやらないといけないと思ったなら、
逃げないで、敢然と立ち向かいやり遂げよう。
やめてもいいことなのに、
決断できずにダラダラ続けると、
それがトラブルの元になる。
(言志録 63凡事於吾)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(曖昧な気持ちで取り組むと間違いが起こる可能性が高い)
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062 得意なところを語ってもらおう
誰か人と話をする時に、
相手の得意なところ、
優れたところを
語ってもらおう。
そこで得られる言葉は、
とっても役立つから。
(言志録 62凡与人語)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(一番得意なことから聞き出すようにすれば自分にとっても有益だし、相手も話がしやすい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
061 共通の言葉
ひとつの技に長けた人、
優れたものを持っている人たちは、
お互いに、初対面だとしても
存分に語り合うことができる。
(言志録 61一芸之士)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(突き詰めている者同士には、共通の言葉がある)
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佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
060 書物から離れる
昔の人は、書物を読んで心を育て、
書物から離れて、
自分の目指すところ、
つまり志を明確にした。
ただ書物を読みこなすだけではなく、
そこから離れてみることも、
学ぶことになるのだ。
(言志録 60古人読経以養其心)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自分自身や社会の現実を見ることで、学んだことを発展させることができる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
059 逃げない気持ち
私たちは、苦しみや、困難や、思いがけない出来事、変化に直面することがある。
恥ずかしい目にあったり、
悪口を言われたりすることもある。
でも、こうしたことは、
私たちがもっと高い段階へ進むための
人格を磨くチャンスと考えることもできる。
どうやってこうした事態を克服していくか。
よく考えてみよう。
逃げ回ってもなにも得られない。
(言志録 59凡所遭患)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(困難に立ち向かうことで人は成長する)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
058 体験と学び
山に登ってみる。
川を渡ってみる。
海にボートで漕ぎ出してみる。
一日に三十キロ以上、歩いて旅をしてみる。
野宿をしてみたら、よく眠れなかったりする。
食べ物がなくて、腹ペコになることもある。
用意した服だけでは、寒さをしのげないこともある。
こういった体験から、学ぶことは多い。
もしも、快適な部屋の中で、
お茶でも飲みながら読書をしていたとしたら、
きっと、学ぶ力はつかないだろう。
(言志録 58登山岳)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(なにかを学ぶとき、体験や環境の影響は大きい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
057 命は語る
植物を育ててみよう。
生き物の持つ「気」や、
万物が秘めている勢いを観察してみよう。
とても得るものが多いはずだ。
どんな事象からでも、
私たちは学ぶことができる。
(言志録 57培植草木)
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
(命あるものは大切なことを教えてくれる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
056 酒の怖い面
まじめにがんばることの正反対が、
だらしなく怠けること。
節約してムダをなくすことの正反対が、
ぜいたくして浪費すること。
お酒は人をだらなしなく怠け者にし、
ぜいたくや浪費のきっかけになる。
まじめにがんばって、節約してムダをなくせば、仕事も家庭も発展する。
怠けて浪費をすれば、
仕事や家庭は崩壊する。
お酒は、そんな崩壊へと向かわせる
きっかけになる。
(言志録 56勤之反為惰)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(酒が人に及ぼす功罪を意識しておこう)
055 酒の効用
お酒は次の二点で役に立つ。
その一。神をカタチとして感じることができる。
神は形がなく、気だけの存在だ。
お酒によってその気の精を集めて、形にすることができる。
その二。年寄りを元気にする。
お年寄りは、元気が足りなくなるので、
それを補うのにお酒を役立てるといい。
ただし、血気盛んな若者は、
酒を飲んでも効用は少なく害が多いので、ほどほどにしたほうがいい。
(言志録 55酒之用有二)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(飲んでも飲まれるな。飲めばいいというものではないのが、酒の不思議さだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
054 適量
お酒は穀物の精だ。
少し飲むことで、体にもいい。
だが、薬もそうだけど、
飲みすぎてしまうと、
体を壊す。
いろいろな薬が、
自然界からもたらされる。
自然の良薬でも量を間違えれば、
体に悪い。
お酒が人を異常な行動に走らせるのは、
飲み過ぎているからだ。
(言志録 54酒)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(加減は難しい。いいものでも悪い影響が出るまで過剰に摂取することがある。適量をどう学ぶか。それは一生の課題かもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
053 元気の素
私(佐藤一斎)の父は、今年86歳となる。
そばに人が大勢いると、気分もよく元気だが、
人が少ないと元気そうには見えない。
きっと私たちには共通の「気」、つまり「気持ち」があるんじゃないか。
老いた父が、気心の知れた人たちと一緒にいると元気になるのは自然なことだろう。
つまり元気の不足しがちな高齢者も、
ほかの人たちの「気持ち」を得ることで、元気を取り戻せる。
薬を飲んだり治療を受けたりするように。
中国の古い言葉に
「80歳にもなれば、人は人でしか温まらない」とあったが、これは「人の気持ちで温める」
ということだろう。
(言志録 53家翁今年齢八十有六)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(気は誰もが発している。その使い方によっては人を元気にすることもできる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
052 安心感と決断力
リーダーのように
集団の中で重要な立場となった人には、
二つの役割がある。
まず任された組織内を穏やかにすること。
そして決断力で事態に対応すること。
(言志録 52社稷之臣所執)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(安心感と決断力を正しく提供できる者がリーダーにふさわしい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
051 リーダーの仕事
リーダーは、根本的なところだけに力を注ごう。
日常的な細かいところは、これまでやってきた伝統的なやり方のままでも構わない。
部下の人たちや世の中の人たちが、
言いたくても言えないことを
あえて言う必要があるかもしれない。
これまでのリーダーでは解決できなかったことに取り組むことも、
年に数回、あるだろう。
その年に数回必要な出番こそ、リーダーの重要な役割なのだ。
細かいことにかかわりすぎて、自分の個性を出そうとあれこれとやり方を変えるなど、部下を混乱させることは、リーダーの仕事ではない。
(言志録 51大臣之職)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(小事は部下に任せる。その改革は組織で行う。リーダーがすべきはほかの誰もできない大きな決断だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
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M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
050 手入れする
植物は自然に生えるかもしれない。
だけど、手入れすることで、
もっとよく成長させることができる。
人についても、
同じことが言えるんじゃないかな。
(言志録 50五穀自生)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自然に任せてもいいが、あえて手を入れることで促進できることもあるのではないか)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
049 自然からのご褒美
自分がやるべきことをきちんとやり、
それが自然の流れに沿っていれば、
自然からご褒美がもらえるかも。
自分がやるべきではないことをやったり、
自然の流れに逆らっていたら、
自然からのしっぺ返しを受けるだろう。
自然の流れに沿っていれば、
ことさら褒美や罰を用意する必要はない。
(言志録 49助天工者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(褒美をチラつかせたり、罰をチラつかせて人を動かすよりも、自然の流れに沿った行動を目指した方がいい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
048 ベストを尽くす
大地と空があって、地球なんだ。
人の役割も同じようなもの。自然の役割ってのがあるよね。
それぞれの役割でベストを尽くす。
利益が大きいからベストを尽くし、
利益が少ないから手を抜く、
といった考えはつまらない。
どのポジションだろうと、利益があってもなくても、生きていることにベストを尽くせばいいんだ。
(言志録 48天尊地卑)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(利益中心の行動は浅い)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
047 利益より目的
リーダーは目的へ到達するため、
優れた部下を登用し、
一緒に仕事をしながら利益を得る。
リーダーと部下が一体になって取り組む姿こそ、理想である。
利益を前提にして部下を集めると、
部下は利益の分だけ働くようになり、
本来の目的へ到達する意欲を失い、
ただ金のためだけの集団になってしまう。
(言志録 47君之於臣)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(お金で結びつく前に、目的を同じくする者とチームをつくること)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
046 思い上がり
わたしたちや地球上の自然は、この世に自由に存在している。
この世の自然や人々を、たまたま引き受けて
手入れしたり育てたり、仕事を与えるのはリーダーの役目だ。
そのリーダーが勘違いをして、この世の土地や人々をすべて自分の所有物だ、などと思い上がってしまうことは許されない。
リーダーたる者、人々や自然が持つ自由を盗むような行為は慎むべきだ。
(言志録 46土地人民)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(リーダーの役割をよく考えてみよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
045 嫉妬もあるよね
特別に気に入られたり可愛がられたりすると、
嫉妬されるようになるんだね。
親しくなりすぎてしまったために、
かえって付き合いが自由にできなくなることってあるよね。
(言志録 45寵過者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人との関係は節度や距離感をうまく保つことが難しい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
044 一歩退く
うまくいった時こそ、
一歩退くことを考えよう。
あまり上りつめると、
降りられなくなる可能性があるがあるからだ。
(言志録 44得意時候)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(好調時にはどこまでも行ける気がしてしまうものだ。失敗するまで突き進むと、それまでの成果も失いかねない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
043 いまここにある間違い
過去に起きた間違いを、後悔する人はいるけれど、
いまここで起きている間違いを、
改める人は少ない。
(言志録 43悔昨非者有之)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(惰性でいかずに、しっかり現実を見てダメなものは改めよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
042 自分の価値
自分の能力や、置かれた立場を知ることで、
自分にどのぐらいの価値があるのかを知ろう。
(言志録 42分知)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(現在の価値を知るところから、今後の成長に必要なものが見えてくる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
041 ひきしめる
お金持ちになるとか、出世して偉くなると、
季節で言えば春とか夏の気分だ。
心はのんびりと落ち着くだろう。
貧しいとき、地位が低いときは、
秋や冬のようだ。
心にゆとりはなく、ひきしまっている。
春のウキウキや夏ののんびり気分では、
志も適当になってしまうに違いない。
厳しい秋や冬にこそ、
志がしっかりと固まるのだ。
(言志録 41富貴)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(厳しさの中で固まった志を忘れてはいけない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
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M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
040 好き嫌い
好きだ嫌いだ、
といった気持ちが先になってしまうと、
その人の品性や価値観を、
見誤ってしまうことがある。
(言志録 40愛悪念頭)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(気持ちも大切だけど客観性も大事)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
039 初めて会うとき
初めて会った時に相手をよく観察しよう。
そしてそのときに判断してみよう。
相手が賢い人かどうかは、ほとんど間違いなく、初めて会ったときにわかるからだ。
(言志録 39人之賢否)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(人との出会いは、初回こそが大事。そのときに真剣に向き合うことだ。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
038 言葉と態度
心は、
言葉と態度に、はっきりとあられる。
言葉をよく聞いて、
態度を見ていれば、
その人が賢明か、そうじゃないのかわかる。
隠すことなんてできない。
(言志録 38心之所形)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(話す時の言葉や態度は誤魔化せない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
037 批判できる人
人の考えや意見を受け止められる人になろう。
それから、はじめて人を批判できる。
そういう人からの言葉なら、
それが批判であっても多くの人が受け入れるはずだ。
人の考えや意見を聞かない人が、
誰かを批判したところで無意味だ。
そういう人からの批判は、
誰も聞かないから。
(言志録 37能容人者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(批判とは異論を受け止めたのちに、できることなのだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
036 とにかく聞こう
人の言葉は、とにかく聞こう。
それから判断しよう。
拒絶してはいけない。
惑わされてもいけない。
(言志録 36人言)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(まず聞く姿勢が大切。自分の考えはあとからでいい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
035 受け入れる前に
いろんな考えや人の意見を受け入れることができれば、
それはすばらしい。
でも、その中にも、いいこともあれば悪いこともあるから。
このことは、よく考えておかないとね。
(言志録 35容物)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(度量は広い方がいい。とはいえ善悪の判断ができることが前提)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
034 ベテランのように
若い時こそベテランのように考え、
気を配ってみよう。
ベテランになったら、
若々しい気持ちをもって取り組んでみよう。
(言志録 34少年時当著老成工夫)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(いま持っていないものを意識することでよりよい結果が得られる)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
033 鋭さを持とう
志がある人、つまりはっきりとした目的を持っている人って、どこか鋭いんだよね。
鋭い人には隙がないので、
余計なことが入り込んでくることもない。
無目的にいると、鈍くなってしまう。
その鈍さをからかわれているうちに、終わってしまう。
(言志録 33有志之士如利刃)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(目的をきっちりと持つことで、余計なことに)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
032 ただ本を読んでもね
志をしっかり持つ、つまり、
はっきりと目的を持って、その達成を目指していれば、
いろいろ働いたり日常生活をする中にも、学ぶことがある。
もちろん、本を読んだり理論を学べば、さらにいいことは間違いない。
目的が明確じゃないと、どれだけ読書をしても、時間がむだに過ぎるだけだよ。
学問や知識を高めたいなら、まず、
目的を明確にしておかないとね。
(言志録 32緊立此志求之)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(たとえば「目的を明確にする」を目的として行動したり学んだり、本を読んでいくのもいいよね)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
031 本当に忙しい?
「忙しい」って、つい言ってしまうよね。
でも、見ていると、本当に必要な仕事は、十あるうちの一つか二つ。
十ある仕事のうちの八割から九割は、どうでもいいことをしているんじゃないかな。
おまけに、どうでもいいことを必要なことだと思い込んでいたりする。
これじゃあ、いつも忙しくなってしまうのも仕方がないね。
目的がはっきりして、その実現に向かっていくと決めたなら、
どうでもいいことを必要だと思い込んで、仕事をしている気になって満足したりするような、
そんな状況にはまりこんではいけないよ。
(言志録 31今人率口説多忙)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(多忙であることが、必要なことをしない理由にはならない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
030 厳しさと寛容さ
自分に対して厳しい人は、
ついつい他人に対しても厳しくなる。
他人に対して寛容な人は、
ついつい自分に対しても寛容になる。
厳しい人はあくまで厳しく、
寛容な人はあくまでも寛容と、
一方に偏ってしまうようだ。
でも、優れた人は、
自分に対しては厳しく、他人に対しては寛容になれる。
(言志録 30自責厳者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(このようなバランスを、自らきちんと保てるかどうか、考えてみて欲しい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
029 おおらかさ
昔の言葉に、
「人の守るべきもののうち、大きなものはしっかりと守り、守るべきものとはいっても細かな部分は、力加減に差があってもいい」
というのがあった。
他人に対しては、この言葉のように接しよう。
こうしたおおらかさを持つことは、とてもいい。
(言志録 29大徳不踰閑)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(厳しさとおおらかさ。そのさじ加減を間違えないように日々、気を配りたいものだ)
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028 自然の力
ちょっとでも自慢したいとか、
いい気になったり得意になってしまうと、
自然の持つ力を、
まったく活かせなくなってしまう。
(言志録 28纔有誇伐念頭)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(私たちは自然の中にある。自然の力を自分のものにすれば、スムーズに進めるはず。それを妨げているのは自分。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
027 細かいことも大事
大きな目的に向かっている人は、
小さな仕事でも、熱心に取り組む。
ずっと将来のことまで、深く考えることのできる人は、
細かいことも、おろそかにはしない。
(言志録 27真有大志者)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(小さな事が、見えなくなることがあるが、目的が大きいほど浮き足立つのではなく、しっかり足元を見よう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
026 簡単な方法を見つけよう
なにかを始める前に、いろいろ考える時間があれば、細かいところはできるだけ詳しく、
すみずみまで注意深く検討しておきたい。
でも、一度決めてしまったら、
実行する段階では、一番わかりやすくて簡単な方法でやれるようにしたい。
(言志録 26慮事欲周詳)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(実行段階ではシンプルでやさしい方法を採る方が失敗は少ないのだから、そこまで熟考しておくといいよね)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
025 有名になりたい
有名になりたいと思い詰め、
その欲望に取り憑かれたまま判断したり行動するのは、いいことではない。
でも、
有名になることなんてくだらない、なんていつも思っているのも、
また、いいことじゃない。
(言志録 25有心求名)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(名声は結果だ。目標ではない。かといって名声への憧れを捨てると、人として間違った決断をしてしまうかもしれない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
024 心の状態を知る
心が乱れているか、平常心でいるか、気持ちを強く持っているか、弱気になっているか。
自分の状態は、書いた文字にはっきり現れる。
いろんな感情の動きが、
書いた字に見えてくる。
だから、毎日、いくつか字を書いてみよう。
そこに現れている字の勢いや乱れから、
自分なりに考える時間を持とう。
(言志録 24心之邪正)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(字の美しさ、バランスのよさは人それぞれ。その微妙な違いは、書いている本人が一番よく気付くもの。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
023 よく確かめる
なにかをやろうとする前に、
まず、本当にやるべきことなのか、
心によく確かめてみよう。
きちんと心を整えてから取りかかろう。
(言志録 23吾方将処事)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(確かなことは、自分の心の中にある。だから、きちんと自分の心に聞く。それから進めよう)
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022 いつも心地よく
いろいろな考えがあふれて、
ぐちゃぐちゃになってしまうのは、
利害や名声や噂とか、自分の外側の世界のいろんなことに、心が乱されてしまうから。
つねに志、つまり「自分はこれをやりたいんだ」という気持ちをしっかしとさせておくことで、外側からの影響を受けなくてすむ。
心が乱れるような話を聞いても自然な自分でいられて、いつも心地よい状態なんだ。
(言志録 22間思雑慮)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(難しく考えることはないんだ。心地よい状態でいたければ、気持ちをしっかり持つことだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
021 間違った結論
心がなにかに蓋をされたようになっていたら、
どれだけ考え抜いたとしても、
間違った結論になってしまうんだ。
(言志録 21心下痞塞)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(考え方の正しさの前に、心の状態が正しいかを確認しておこう)
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020 振り回されないために
思っていることが、顔にはっきり出すぎると、誰からも気持ちが読まれてしまうよね。
すると他人からいろいろと影響されて、自分に関係のないことで振り回されることが増えてしまいがち。
そして、間違った行動や選択につながりやすい。
気持ちをきちんと持って、
背中に刻み込むような感じでいこう。
くだらないことに振り回されずに、
自分自身としての行動を取るために。
(言志録 20人精神尽在乎面)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(秘めた心は、より自分らしく生きるために不可欠)
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佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)
M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」
019 こうなりたい
表情はあくまでも冷静。
後ろ姿は、たのもしい。
心は、無心。
そして腹がすわっていて、
ものに動じることがない。
(言志録 19面欲冷)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(こんな風になれたらいいなあ)
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018 最高の結果
予想をはるかに越えて、いい具合になっていたり、天才じゃないかな、なんて思うほど最高の結果になったりすることがあるよね。
でもそれこそが、まさに自然の成り行きなんだ。
ぼくたちが自然を感じて、そのままにやり遂げると、そんな風に、いい感じに出来上がるわけ。
これ以外の方法では、そこまでうまくはいかないんだ。
(言志録 18凡事到妙処)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(最高の結果が得られたとき、自分の力だと慢心するのではなく、自然な流れにうまく乗れたことを感謝したい)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
017 自然・不自然
落ち着いて、自然をながめてみると、
どんなところにも、ムリがなくて、
わざとらしいところがないんだね。
(言志録 17静観造化之跡)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自然でムリのない生き方、自然でムリのない仕事。それは一つの理想だろう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
016 育てる力、倒す力
植物を育てるのは、春から夏の季節。
恵み雨が降るのも、大自然の力によるものだ。
こうして育った植物も、秋から冬になれば、
霜が降り、雪が降り、倒れていく。
つまり、霜も雪も、春夏の雨露と同じように、
いきいきとした大自然の力なんだよね。
(言志録 16栽者培之)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(あなたを育ててくれる力は、あなたを倒す力でもある。自分ではどうにもならない自然の力と同じように、受け止めよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
015 自分の道
いろいろなことを学んで
自分の進むべき道を決めるのもいいし、
自分の進むべき道を決めてから、
いろいろなことを学んでもいい。
どちらも、同じことなんだ。
(言志録 15修辞立其誠)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(やり方は自分で見つけよう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
014 情報過多からの脱却
ほかの人のいいところをきちんと学んで、
自分のものにするんだ、という気持ちを持つのはいいこと。
だけど、家族や自分の身の回りの人たちから学ぶだけでは、
なにか足りないんじゃないか?
読んでいる本の数からしても、
ぜんぜん情報不足な気がしないか?
より多くの情報を得て、学んで、
その上でベストの選択をしたい。
そうは言うけど、
ただ情報や知識をたくさん持てばいい、
というのとは違うのではないか?
なんのためにより多くの情報や知識を必要としているのか。
そこをはっきりさせておかないと、
情報や知識に振り回されるだけになっちゃう。
(言志録 14吾既有資善之心)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(たくさんの本を読めば学べるのか。それは違う。学ぶ意志が先。学ぶ気持ちがなければ本をただ読んでも意味がない。情報も同様で、ただ情報を集めれば正しい道がわかるわけではない。まだ意志が明確ではないときは、たくさんの本や情報に接することも大切だけど、意志がはっきりしてきたら、絞り込んでいく必要がある)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
013 本を読む理由
学ぶために、本を読む。
(言志録 13為学)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(本を読めば学べるのか。それは違うのです。学ぶ意思が先。学ぶ気持ちがなければ本をただ読んでも意味がないのです)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
012 過程を知る
昔の優れた考えを学ぶ時は、
ただ優れた考えだけを学ぶんじゃなくて、
そこに到達した過程も
学んだほうがいいだよ。
(言志録 12以三代以上意思)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(過去の優れた考え方と訳しましたが、原文では「三代」、つまり古代中国の夏、殷、周のことを指しています。夏(か)は『史記』などに出てきますが考古学的な証拠が乏しく長く伝説とされてきました。現代では研究が進み実在していた可能性も出てきました。背景を含めて知ることで、なにがどう優れた考えなのかをより明確に知ることになります)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
011 心で計る
ハカリにのせて、ぼくたちは体重や荷物の重さを知る。
ハカリはハカリ自身の重さを計測できないよね。
物差しがあれば、ぼくたちの身長や物の長さを知ることができる。
もちろん、物差しは自分の長さを計ることはできない。
ぼくたちには心がある。
心は、世の中で起きている事の善悪を計ることができる。
しかも、自分自身の善悪も計ることができる。
心は、特別な存在なんだ。
(言志録 11権能軽重物)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だからこそ、自分の心を磨いておこう)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
010 どのように生きるか
自分の心に聞いてみてほしい。
なぜ、この世に生まれたのか?
私がやらなくてはならないことは、なんだろう?
いまここに生まれてきた以上、天職があるはず。
天職を果たせなければ、生まれてきた目的を達成できないのでは?
こんなことを考えてみれば、
これからどのように生きていくべきか、
見えてくるんじゃないかな。
(言志録 10人須自省察)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(天職とは生まれて来た目的を達成することだ。「ここがロドスだ、ここで跳べ」との言葉もある。いま自分がやるべきことが、生まれて来た理由と重なれば最高ではないか。)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
009 地位で人の優劣は決らない
「あの人は優秀だ」とみんなが認める人は、
「徳」のある人。つまり人格や品性も備わっているはず。
徳がある人には、それに応じた地位が与えられた時代もあったんだけどね。
つまり徳の高さによって、地位の価値も変化したんだよね。
だけど、そんな時代は昔の話。いまでは徳がなくても、地位を得る人が出てきてしまった。
だから、優れた人、という意味があいまいになってしまったんだ。
地位がまるでその人の優秀さをあらわしているみたいになっちゃった。
いま優秀と言われている人たちに、徳はあるのだろうか。
その地位にふさわしい徳もなく、
地位にしがみついているとすれば、それは恥ずかしいことじゃないのかな。
(言志録 9君子)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(肩書きだけ、地位だけでは人を評価できない。人格や品性を磨かない人が、どれだけ偉そうにしても、その程度のものに過ぎない)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
008 生きていく
ぼくたちには、もともと才能がある。
だから、それを徹底的に磨けばいい。
ぼくたちは、もともと
この社会で生きていく上での役割がある。
だから、それを徹底的にやり遂げればいい。
これが生きていくってことなんだ。
(言志録 8尽性分之本然)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(才能と役割のどちらかだけでは、不十分かもしれない。両者をバランスよく発揮できれば最高だよね)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
007 成果を出すための学び
志を立てる、
つまり目標をこれと決めて、
それに向かって突き進み成果を出すために、
なにを学ぶと思う?
恥ずかしいってことを
学ぶんだよ。
(言志録 7立志之功)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(恥ずかしさを知らない人は、失敗しても平気だし、努力も一面的。本当の意味での恥ずかしさをよく知る人こそ、努力を惜しまず、結果に結び付けるんだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
006 目標は自分で決める
学ぶためには、まず志を立てよう。
それは、目標を定めて
自分の気持ちをそこに集中させることだ。
だけど、この目標を立てることや、
気持ちを集中させていくことを、
ほかの人から無理強いされてやるようじゃ、
だめなんだよ。
自分の本当の心はどこにあるのか?
素直に耳を傾けてみよう。
そして、自分の気持ちに忠実に、
目標を定めよう。
(言志録 6学莫要於立志)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(強制されていたんじゃ、学べるものもなかなか学べない。だいたい目標は、自分で作るものだし、自分の心を偽っちゃいけないんだ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
005 なんだ、あいつは!
頭に来ることって、
実は学ぶためのエネルギーになるんだ。
「なんだ、あいつは!
おれだって、
あんなやつぐらいにはなれるんだ。
おれだって、やれるんだ」
こんな具合に、
腹が立ったことを
バネにしていくことなんだ。
(言志録 5憤一字)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(自分にはできない、とあきらめるんじゃなく、なにくそって思うかどうかで、その人の進歩に大きな差が出てきちゃうんだよ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
004 変化の速度
宇宙ってのはね、少しずつ変化するんだ。
ぼくたちの世界も、少しずつ変化している。
どうしたって、それは止められない。
変化を避けようとしても、難しいんだよね。
それにね。
「こうなってほしいな」とかって思うような変化を、もっと早く実現しよう、
なんて思っても、
それもなかなかできないものなんだ。
(言志録 4天道以漸運)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だからなるようになることを、受け入れる気持ちも必要だし準備も必要だ。それに、なかなか思うようにならないからって、焦って動き回るだけじゃなく、待つことも大切だ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
003 誰のために仕事をするの?
きちんとした事を成し遂げようと思うんだったら、
自分は宇宙の意思に従って
仕事をするんだ、といった気持ちが必要なんだ。
誰かに認められたいからやる、
なんて気持ちがあったんじゃ、だめなんだよ。
(言志録 3凡作事)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だから正々堂々と自分の仕事をしようよ。人の意思で操られても、ろくなことはないんだからさ)
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
002 誰から学ぶ?
一番、物事をよくわかっている人は、
宇宙の理論を先生として学んでいる。
次にわかっている人は、
優れた人を先生として学んでいる。
その次にわかっている人は、
昔の人の書いた教えを先生として学んでいる。
(言志録 2太上師天)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
自分にふさわしい先生を見つけること、そしてより大きな存在から学べば、自分もそれだけ多く学べるんだよね。
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
001 運命ってどう思う?
宇宙や地球上のことは、昔もいまも、
どこの国や地域でも、変わらないで続いている部分がある。
太陽に照らされた部分もあれば、日陰もある。
太陽が出て沈み、月が満ちては欠ける。
春、夏、秋、冬と季節がやってきては去る。
こういうことって、ずっと前から
決まっていたことなんだ。
金持ちになったり、貧乏になったり。
生まれたり、死んだり。
短命だったり、長生きしたり。
大儲けしたり、大損したり。
チヤホヤされたり、みんなからディスられたり、
仲間が集まってきたり、離れていったり……。
こういうことって、
決まってしまっている範囲みたいなものがあって、
ぼくたちは、その中であくせくしているんだよね。
だって、ぼくたちは、その決まっているはずの中身を、
まったく知らされていないんだもの。
いろんな仕組みや仕掛けがあるんじゃないかって思うけど、
芝居や映画なんかのように、
見る側ってそういうことを知らないもんだから
ハラハラ、ドキドキしちゃうよね。
そんな感じに似てるのかな。
だけど、そんな風には思わない人が多いみたい。
自分にはそうした決まりごとを越えるだけの
能力や知力があるって思い込んでいて、
一生の間、必死になってバタバタして、
求めるものを探して走り回ったあげく、
最後には疲れ果てて倒れちゃったりして、ね。
こういう風に迷ってる人って、
たくさんいるんじゃない?
(言志録 1凡天地間事)
◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇
(だから、余計なことは考えないで、
自分の運命があるなら、それを自分で
自然に切りひらいていけばいいんだよね)
と続けたい気がします。
志とかっていうと、青臭くて、ちょっと恥ずかしいかもしれません。
でも、これって、結構、あとあと効いてきますよ、人生に。
あまり教えてくれないし、人に教わるものでもないかもしれません。
だからって、何も知らないできちゃうと、ちょっとね。
いつの時代も先は見えません。見えないものはわかりません。
わかっているのは、自分がそれを信じることができるのか、どうか。
その心の部分を補強し支えてくれるのが、志ってことなのかな、
と思ったりもします。
運命は自分で変えられる。だけど、太陽を西から昇らせることはできないわけで。
いま、どこに力を注いだらいいのか、常にこういう感覚を研ぎ澄ませておかないと、
あっという間に時間だけが経ってしまうのですね。
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください。
【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。
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