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- 原稿のカタチ 副詞を削る

「など」「とか」を削る、に続いて原稿の体裁について考えています。
副詞ってなに?
もう一つ、いろいろな人たちから、目の仇にされているのが「副詞」です。
「まずは素姓の怪しげな代名詞を削除する。(略)次いで、必要に応じて説明的な語句を書き足し、当然、副詞はできる限り削る」(スティーブン・キング『小説作法』P252)
「最初は発想を流すためにかまわず(副詞を)入れるんです。後でそれを削って行く」(安部公房の試み~世界最前衛であり続ける理由~)※このサイトはなくなっている
作家の「推敲」についての注意点で、たまたまピックアップしたものですが、「作家」という点が重要です。
つまり、副詞は、通常の文章表現では、コミュニケーションのためにかなり重要な役割を果たしています。
(この「かなり」も副詞ですね)
ウィキペディアには、こう書いてあります。
…………
状態の副詞
主に動詞を修飾し、動作・作用がどんな状態(どのように)かを表す。「すぐに」「ときどき」など。
程度の副詞
疑問・禁止・感動などの意味を付け加えるもの。「とても」「もっと」「かなり」など。
叙述(陳述・呼応)の副詞
被修飾語の部分に決まった言い方を必要とする(副詞の呼応という)副詞「決して(~ない)」「なぜなら(~だから)」など。
指示の副詞
物事の様子などを指し示す副詞で、「こう」「そう」「ああ」「どう」の四語だけである。(指示語)
*例
「ばたばた走る」だと「走る」が動詞なので「ばたばた」が副詞となる。
「非常に美しい」だと「美しい」が形容詞なので「非常に」が副詞となる。
…………
どうして副詞はダメなのか?
副詞を削っちゃったら、寂しくなると思います。どうして副詞はダメだというのでしょう? 削れと言うのでしょう?
副詞を安易に使わない、というルールを作ると、そこに別の言葉で表現をしなければならなくなり、頭を働かせるようになります。それが原稿の体裁をさらによくしていく一助となります。
小説だけではなく、エッセーやビジネス文書でも同様で、副詞が多くなってくると、スッキリしなくなっていき、「冗長」「散漫」なイメージになりがちです。
「きらりと光る」とか「ばたばた走る」、「ぐいぐい迫る」といった表現も使いすぎると、陳腐になっていきます。
クリエイティブに表現していこうと考えたときは、「きらり」とか「ばたばた」「ぐいぐい」を、「本当にその言葉でいいの?」と疑ってみる。
「陳腐だな」と思うかどうか。「陳腐だけどあえて」と思うかどうか。さらに「いらないな、削ろう」と思うかどうか。
それだけで原稿の質は高まり、結果的に整った体裁の原稿になっていきます。体裁がよくなると、それだけ読者に伝わりやすくなるはずです。
「すぐに返事があった」といった文章を書いたあとに、「すぐにって、どれぐらい?」という疑問を持つ。
書き手はそれを1秒以内と思っているかもしれませんが、読み手は1分、いえ1時間ぐらいまで許容しているかもしれません。一秒と1時間ではまるで違うでしょう。そこをどう表現すれば伝わるのか。
どうせ曖昧なら、なくても通じるかもしれないし、別の表現に変えることができるかもしれません。そこにクリエイティブ、オリジナリティーの発露があるのです。
かといって、すべてにおいてオリジナリティを追求していくと、「こいつ、何言ってるの?」ともなりかねません。読みにくい。わかりにくい。まわりくどい。説明しすぎ。その結果、共感しにくい文章になっても困ります。
ただ削ればいいわけではない
取り付く島もない文章よりは、「など」「とか」そして副詞をうまく使うことで、読みやすくすることも可能でしょう。
全部削ればいい、というわけでもないし、全部オリジナリティを出す必要もないから難しいのです。うまくいったときは、書き手の個性がしっかり出て、なおかつ大多数の読み手に「わかる」文章となります。
また、余計な言葉をあえて加えることで、著者は時間をコントロールできます。「など」「とか」「副詞」によって、次の言葉や文へ行くまでの「間」を作ることができます。リズムのために、あえてそれほど意味はないけど、あってもなくてもいい言葉を足してみたり引いてみたりする。それによって、読み手はリズムを感じるようになります。
短い文章の連続のあと、息継ぐところのわからないほど長い文節がやってくる、さらにひらがなやカタカナが連続したとにゴツゴツとした漢字、熟語、あえて最近は使わない表現をぶち込んでみる。それもまた個性でありリズムです。わかりやすさを追及しながら、ちょっと難しい表現を混ぜてみる。注意を引きつける。そういう方法で著者の気持ちを読者に伝えることもできるのです。
リズムのいい文章は、無駄がない文章でしょうが、無駄がない文章のすべてにリズムがあるとは言えません。
読み手を心地良く最後までリードしていくためには、リズムは重要で、そのために「間」をどう作るか工夫しなければなりません。このときあえて、「本来ならなくてもいいけど、ここに追加したい言葉」を選んで使うわけです。
推敲、原稿の体裁に少しでも目を向けていくときに、副詞の使い方に注目して読み返すのも有効なのです。
(初出かきぶろ2011-01-30、2021/06/12加筆修正)
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