ワンイシューで書く ビジネス書入門 その2 目的よりも効果を重視しよう

 この記事で言いたいことは、ひとつだけです。
「ビジネス書は目的よりも効果を重視しよう」

ビジネス書の目的はさまざま

 ビジネス書にもさまざまあります。ざっと思いつくままに上げてみましょう。
・PR
・普及
・主張
・レファレンス

 簡単に解説しますと……。
 PRを目的としたビジネス書は、著者自身のPR(成功譚、半生など)、企業のPR、商品のPRなどなど、さまざまあります。PRの目的は売り上げや利益につながること。著者なら講演に呼ばれる、新しいビジネスにつながるなどの効果が期待されます。企業の場合はリクルート、社員満足度、顧客満足度、ブランド化などでしょうか。商品の場合はもちろん売上増でしょう。
 普及を目的としたビジネス書は、新しい技術や考え方、手法などを解説したり、教えたり、広めたりするタイプ。期待される効果としては、取り上げた言葉や技術などがスタンダードになっていくこと。あるいは一定の地位を得ること。少なくとも認知されることが求められるでしょう。
 主張を目的としたビジネス書は、ご自身(研究者、経営者、経験者など)が世に問いたいことを表現することです。効果としては変化を促すこと、あるいは同士・賛同者を得ること、発言の力を増強することなどとなります。
 レファレンスを目的としたビジネス書は、辞書、事典、まとめ、用語集、歴史的経緯、データなどで、効果としては必要としている人たちが日々参照してくれること、さらに後世に資料として残ることでしょう。

忘れられがちな「効果」

 ワンイシューで書こうと言ったとき、多くの人はご自身の考えの中で、もっとも多くの人に賛同されそうなものや、あるいはいま世の中でほとんど日の当たっていない考えなど、いわばキャッチーなもの、カッコいいもの、オルタナティブなものを選びがちです。
 なぜなら、たった一つのいいたい事が「当たり前でいいのだろうか」とか「目立たないのではないか」とか「話題にならないのではないか」といった不安が最初に浮かぶからです。
 ワンイシューで書くといっても、それは書き手の問題であって、結果的にそのビジネス書のタイトルが、イシューそのものになるかは別問題です。また、出来上がった原稿をどのように構成するか、どこをメインにするかもまた、あとの編集作業の問題でしょう。
 ワンイシューで書くことは、ブレを減らし、必要なことを十分に書くために必要な手段です。書き手がブレなければ、その1冊は最初から最後まで、一つのことを書くために存在します。
 また、追加したいことがあっても、ワンイシューに照らして必要か不必要かを判定できます。
 あくまで書くために必要なワンイシューなので、どれほどありきたり、当たり前でもいいのです。そんなことを言ったら世の中の本がほとんど、ありきたりですから。
 ただ、ワンイシューを選ぶときに、間違ってほしくないのが「効果」なのです。ワンイシューの表現が目的となったとき、ともすると忘れられてしまうのが「効果」だからです。

期待した行動につながるか?

 効果とは、その本を読んだあとに読者の取る行動です。
 簡単に言えば、本を読んだあとに「友達にも教えよう」「自分もやってみよう」「この人に相談してみよう」「この人のほかの本も読んでみよう」「この商品を見に行こう」「この会社にエントリーしてみよう」といった行動につながるかどうか。
 選びに選んだワンイシューで本を書いたのに、それを読んだ人が期待された行動をしてくれなければ、ビジネス書としては残念な結果となるでしょう。
「ベストセラーにしたい」といった欲望とは裏腹に、こうした効果を無視して独善的に表現されたビジネス書もそれなりに存在しています。効果を無視すれば、どれほど優れた目的を持ったワンイシューの本でも、残念な結果になりやすい(たまたまうまく行くこともあるでしょうが)。
 つまり、そのワンイシューで、読者にどんな行動をして欲しいのか。それに向けた内容になっているか。あるいはそのワンイシューでいいのか。そんなことを少し考える時間を作ってみてください。
(2021/09/17)

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ますもと・てつろう

投稿者プロフィール

「かきっと!」の編集長です。記事もいろいろ書いています。
業界紙・誌(物流、金融経済、人事マネジメント)、ビジネス誌、ビジネス書など幅広く編集・執筆をしてきました。
ペットケアアドバイザー(愛玩動物管理飼養士二級、2005年度)
行政書士試験 合格(2009年度)

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