原稿を書き終えることは、なかなか大変です。しかも、その質を高めていく、完成させていくことは、さらにひと手間かかります。
 どうすれば、原稿を整えることができるのか。そのヒントを長年、編集・執筆してきた経験から思いつくままに綴ります。
 セルフパブリッシング、Web、noteなど、個人で自由に発信できる今日、ちょっとだけ気にするとさらに読者に喜ばれることでしょう。

このままでは出せない

 原稿をいただいて読み始めるとほどなく、「このままでは出せない(出版できない)」との警報が鳴り響くことがあります。一種の職業的なアラートです。
 内容に入る前に、体裁についてパッと目に飛び込んできた段階で発せられるこうしたアラートは明瞭で、それを無視して読み進めると「難しい」とか「わからない」が出てきて、ため息をついて読むのをやめるのです。
「この原稿を読み解くことは簡単ではない」と感じてしまうわけです。
 その一因として、原稿のカタチ、要するに「体裁」に問題があることもしばしば。
 体裁を整えることに、もう少し時間を費やしてみませんか。
 読者は自分が読もうとする本は、完璧だと思い込んでいます。現実には、完璧というのは難しいものですが、その期待に応えるには、できる限り体裁をしっかり整えて美しく仕上げておきたいのです。
「中身がいいから、いいじゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、読みにくい原稿は、中身に入ることができず、入ったとしてもかなりマイナスに感じられてしまうものなのです。

「ちゃんとしてる」と思って貰う

 よく「人は見た目」と言うではありませんか。もし、知っている人のほとんどいない会合やパーティーに出ることになったら、服装にとても気を使うのではありませんか?
 本も同じで、読者は著者を知らない人が多いのですから、いきなりTシャツ姿というわけにはいかないのです。かといって、過剰に着飾ればいいわけではありません。
「ちゃんとしてる」と思って貰えればいいのです。すでに有名な人なら、自分らしさをアピールできるファッションでもいい。そうでない人は無難な服装を選ぶでしょう。
 原稿のカタチ、体裁もまた無難であって欲しいわけです。

言葉(単語)、文、段落、お話の各段階で整えていく

 原稿の体裁は、言葉(単語)、文、段落、お話の各段階で整えていくことが求められます。
 ひとつの話として終わりまでにタイトル(見出し)から期待できるものが得られること。そのために話の流れをつくる段落が、それぞれに整っていること。段落をつくる文が読みやすく流れていること。そして言葉が的確に使われていること。
 体裁の細部まで著者が気を配っているかどうかは、たとえば読点「、」の使い方でも読者には明らかとなります。
 最近の傾向で、ひとつの文(句点「。」で終わる)は、ひとつの読点が主流。読点なしでもいいぐらいです。読点二つまでは許容範囲ですが、三つを超えるときはその文全体を再考したほうがいいでしょう。
 四つ、五つと読点が入った文がダメということではありません。正解はありません。あくまで目安です。読点は打ち始めると不要なところにまでつけてしまうことが多いので、こうした点に注意を向けてみるだけで原稿のカタチはよくなっていきます。

客観的に見直す

 文が長い(、が多く。が来ない)と、それだけ技巧的に難しくなり、書き慣れている人(作家など)でも失敗の原因になります。
 もしWeb記事やエッセーなら、気軽に午後のお茶のお供に読むような、あるいは通勤時にちょっと眺めるような文章が求められます。技巧的に難しい長い文章は避ける方がいいでしょう。誤解も減ります。文章上のミスも減ります。
 体裁に注視して、ブラッシュアップ(推敲)してみましょう。
 自分の書いた原稿を客観的に見直すことは簡単ではありません。中身ではなく「体裁」に注目して見直すことで、多少なりとも客観的にチェックできます。
 たとえば読点だけに注意を向けて見直すだけでも、無駄な文章、不十分な表現を発見できるでしょう。

 →「など」「とか」を削る

 →副詞を削る

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