
仮想通貨、または暗号通貨。いまさら聞けないことなら、本を読んでサクッと理解しておくのがいいのでは?
追記:日本語で読むビットコイン原論文 [by Satoshi Nakamoto](coincheck.blogへ移動します)
『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』(大塚雄介著)
いま、いろいろな意味で、話題沸騰のビットコイン(仮想通貨)。
たとえば、ニュースではPCが「ランサム(身代金)ウエア」に感染すると72時間以内に仮想通貨ビットコインで「300ドル相当」を払えと脅される、みたいな話で、「そもそも仮想通貨の支払い方もわからないし」みたいな話題として散見されます。
ですが、話題沸騰中なのは、そういう話ではありません。
こちらのサイト(安全です、たぶん)のグラフをご覧ください。「CryptoCurrency Market Capitalizations」。今日(2017/05/17)の時点で、722もの仮想通貨が世の中にはあるのです。少なくともここには表示されております。
そのうちの1番規模がデカイのが「ビットコイン、Bitcoin」。つまり、あくまでも仮想通貨の代表的なものということになります。ビットコインは。
このグラフをクリックしていただくと、2013年頃は126USドルだったものが、一時的に1120ドルまで上昇し、その後下降。2015年頃からじりじりと上昇を開始し、2016年に733ドルのピーク。ところが、いまでは、2017年3月に1811ドルのピークをつけているのです。1年で倍以上の価格になっているのです。
そして2番目のリップル(Ripple)は、まさに今日、とてつもない上昇を描いています。2017年3月に、0.006USドルぐらいで低迷(いまから見るとですが)していたのが、いきなりバンバンと上昇。今日の高値0.43517USドルへと、72倍に価格が急騰しました。それまで2番目だったイーサリアム(Ethereum)を抜いて市場規模が2位になったのはちょっと前のことなのです。
この『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』が発行されたとき(今年の3月)はビットコインとイーサリアムが、いわばメインで、ですから本書でも「ナンバー2の仮想通貨」と書かれているのですが、それから2カ月でナンバー3となってしまいました。
もちろん、来年の今ごろ、こうした仮想通貨がどうなっているのか私にもわからないので、あえてこうした「いま」をここに記しているわけですけれども。そもそも、今夜、どうなるかもわかりませんし。
仮想通貨そのものは、2011年の「マウントゴックス事件」以降、多くの人に知られるようになりました。ですが、その後は、その技術であるブロックチェーンに焦点が移り、仮想通貨はあまりメインの話にはならなかったのです。ところが、2016年、日本の大手銀行が次々とフィンテックの目玉としてブロックチェーン技術を使った、つまり仮想通貨を使ったビジネスへの参入を表明し、2017年3月31日付けのニュースとして「三菱UFJ、新技術の海外送金を来年導入 手数料安く」(朝日新聞)、「「MUFGコイン」今年後半に実用化へ 三毛社長が語る」(2019年4月9日朝日新聞)などと報道されています。この記事に出てくるのが、上記で高騰している「リップル」なのです。
本書では、とてもわかりやく、仮想通貨の歴史、仕組み、役割を解説していますので、まとまった本として読むのならぜひお勧めです。著者は、「コインチェック」という仮想通貨の取引所を運営しています。ITの世界の人であり、もともと金融をやっていた人ではありません。
ITの時代となってから、あらゆる産業がこのように、従来型の産業からの大転換を余儀なくされているわけですが、金融もそうなりつつあるのです。
会員になってみた
私自身、この本を読んでから、コインチェックの会員になったのですが、理由は日本の仮想通貨の取引所でもっとも多くの種類を扱っているからです。売買をしなくても、12の仮想通貨の動向をリアルタイムで見ることができます。
利用者のチャットも見ることができて、今日などは、リップルが前日比40%も上昇し50円に到達し、その直後に27%も下落して売買ができなくなるなど、チャットではその歓喜や不安や阿鼻叫喚があふれています。
アベノミクス以後、官製的、政治的になっている日本の株式市場の動きに比べれば、むしろ仮想通貨の市場は未成熟でよくわからないですが、人間的で健康的にさえ感じます(あくまで個人の感想ですけどね)。
FX(通貨先物)は株式よりもボラティリティとスピードもありますが、仮想通貨はさらに激しい鉄火場といってもいい状況です。はじめてチャートを見たとき「なんじゃこりゃ」と思いました。
残念ながらいまのところは、「投資」というよりも「投機」、ギャンブルにかなり近いものに見えるのですが、だからこそ、もしかしてこれが今後の社会の重要な要素になっていくのなら、理解しておくことはいまからでも遅くはないでしょう。
韓国ウォンや中国元のボリュームも大きい
そもそも仮想通貨は、世界に3700以上の取引所があるものの、すべての仮想通貨を扱っているところはなく、メインはビットコインです。上記のCryptoCurrency Market CapitalizationsにあるBitcoin Marketsには、300の市場が表示されます。円通貨(BTC/JPY)での取引ではbitFlyerが13位、80位にKraken、277位Coincheck、278位Zaif、279位Quoineなどとなっています。ビットコインの取引のトップは、Poloniex(通称Polo)で、しかもXRP/BTCなのです。XRPはリップル、BTCはビットコイン。つまり、今日については、ビットコインでリップルを買う、という取引がトップ。
では、リップルを見ると、こちらは33位までしか出ていませんが、1位はPoloniexですが、2位にCoinoneによるXRP/KRW取引が入っています。つまり韓国のウォンでリップルを買う取引。1位が全体の46%を占め、2位は20%も占めていました。円でリップルを買う取引は2つの市場で0.36%、0.33%と足しても1%に届きません。
なお日本JPYよりも、KRW、CNY(人民元)からの仮想通貨取引の方が、ボリュームは大きいように見えます。
こうしたデータは日々変わっていくので、あくまで記事を書いていた時、見た時(2017/05/17、15:24)のことにすぎません。
そうこうしていると、XEMが大幅に上昇したとコインチェックからメール。下落し続けていたネム(NEM)が上昇に転じたわけです。一方の50を超えたリップルは急落。目まぐるしい。
どうやら、仮想通貨をすでに保有している人たちは、こうして仮想通貨を他の仮想通貨に換えて、増やそうとする傾向が強いようです。高騰したリップルを持っていた人は、そのリップルで他のいまは低迷している仮想通貨を買うわけです。円に戻したりはしない。たぶん手数料の問題などから、そうやって仮想通貨そのものを増やしていこうとする気持ちが強いのかもしれませんね。
NHKのニュースで「ビットコインが」とか「リップルが」などと言うようになったら、それこそ「いまさら聞けない」ってことになるんじゃないかと思います。
長年、金融ライターをし、北海道拓殖銀行、長銀、興銀、日債銀、山一証券といったかつての雄が消えていく姿を体感してきた私としては、いまのところ、この仮想通貨の売買をするとなると、まだ市場規模が小さい上に、ちょっとした需給で大きく変動してしまう不安定さ、さらに安全性、そしてテクニカル分析さえもまだ通用しないぐらいの歴史の浅さを考えると、とうてい本気で考えることはできない投資先にしか見えません。
信用と利便性はどうか?
たとえば、リップルの高騰にも、それほど根拠があるわけではなく、適正価格も不明なので、いまが高いのか。それとも来年の今ごろにはケタが違っていて、50円ぐらいで騒いでいたことがバカバカしいほどに思えるのか、よくわかりません。
ただ、もし仮想通貨が役立つものだとすれば、いずれ価格は安定して、ドルや円との交換レートの変動程度になっていくと思います。そのとき、700以上もあるという仮想通貨のメインはやはり1つか2つに絞られていくでしょう。たくさんあっても利用されなければ意味がないからです。
通貨は信用性に加えて、利用のしやすさが重要です。クレジットカードは通貨の代わりにはなりますが、使える店、使えない店がある以上、通貨以上の存在にはなりません。仮想通貨の利用しやすさが、どこまで通貨に迫るのか。中期的にはそこが市場規模を左右し、ひいては仮想通貨の価値を左右することになると思います。
取引所の問題も出てくるでしょう。マウントゴックス事件では、その取引所の問題とされました。つまり仮想通貨の売買にどの取引所を使うかは、個人にとっては大きな問題になります。取引所を複数使うなど、分散も必要かもしれませんが、あまり分散すると面倒になってしまいますよね。
さらに、取引所も統合していく可能性もあります。
本書P212あたりの、ハードフォークの件(イーサリアムとイーサリアム・クラシックがある理由について)は、けっこう重要ではないかと思えます。ブロックチェーンだからこその安全性であり、同時にハードフォークという事態があり得るってことですよね。
またたとえば韓国の通貨をリップルに換える取引が急増するように、特定の国の経済状況、貨幣価値(対ドルなど)によっても、左右されることになるでしょう。
加えて、今後もし仮想通貨が、店舗などで普通に使えるようになったらどうなるか。すでにいくつかのお店では使えるらしいのですが、一般的になったときにどの程度の流動性と需給があるのか。中長期的に興味深いものがあります。
もしも2020年の東京オリンピックでやってくる観光客の多くが、ビットコインでの支払いをするまたは、ビットコインから円に換えるようなことがあったら、どうなるでしょうか。アプリで簡単にできちゃうわけで……。技術はすでにあるので。
たとえばコーヒーが、1杯200円。仮想通貨なら160円相当で購入できたとしたら?
わからないことが多すぎる仮想通貨。「いまさら聞けない」ことは、いまのうちに整理しておいたほうがよさそうです。
よくわかないながらも投資をしてみるのなら、ドルコスト平均法なら間違いは少ないかもしれません。つまりコツコツ積立式。さらに仮想通貨も分散。取引の多い仮想通貨からいくつか選ぶといいかもしれません。
信用取引もできて、レバレッジをかけられますが、それだけリスクが増大することは、お忘れなく。
なお、いま「1BTC = 214451 JPY」とかなっていて、1ビットコインが20万円以上するなあ、と思っても、0.1BTCなら、20000円、0.01BTCなら2000円で購入できます。このあたりの自由さは、株式やFX以上かもしれません。もちろん、手数料などを充分に確認しておく必要はあります。
(執筆2017年6月26日、2020年12月28日追記、2022年4月5日追記)
(「かきぶろ」『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン (大塚雄介著)』2017年05月17日より)
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